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コーチング事例集

経営コンサルタントとして独立して悩んでいる綿谷さん~異業種交流会で出会ったコーチとのセッションをきっかけに相手に配慮する重要性に気づく~


会社勤めで経営コンサルタントの仕事をしていた綿谷さんは、自分の事務所をもち独立するのが十年来の夢でした。そのためにこれまで仕事をしていたといっても過言ではありません。綿谷さんへご指名のお話も多く来るようになり、これなら独立しても十分にやっていけると考えて今年三月三十一日に会社を退職し、念願の経営コンサルタントとして独立をしました。

オフィスは自宅の書斎と決め、必要な事務機器等も搬入され、逸る気持ちを抑えながらスタートを切りました。

まずは今までお付き合いのあった企業に独立したことの挨拶と、今後は自分に直接お話をいただけるようにとお願いすることから始めました。ところが、これまで付き合いのあった企業さんは、「わが社は綿谷さんの個人としてのコンサルタントとしての働きよりは、むしろ会社としての全体の働きを評価していたわけです。私どもとしては今後も従前の会社とは顧問契約を続けていく所存です。綿谷さん個人には、これまでお世話になったことでもあり、何かあったときにこちらから声をおかけすることでいかがでしょうか」と体よくあしらわれてしまいました。「何かあったときにこちらから・・・」というのは、「何もないと思えば声をかけない」ということです。

これまで付き合いのあったところは、自分のコンサルタントとしての力を評価してくれていると思っていた綿谷さんは、それが間違いで相手は自分の背中の看板、○○社のコンサルタントということを評価していただけだということに、初めて気づきました。

このままではいけないと考えた綿谷さんは、いろいろなつてを頼りにして、これまで付き合いの全くなかった会社さんへの営業を開始しました。飛び込み営業も行ったわけです。しかしながら独立して四ヶ月。営業をかけても相手にしてくれる企業はほとんどなく、話すらまともに聴いてもらえなかったり、話は聴いてもらえるものの、相手にとって必要な情報を引き出されると、後は、邪魔だといわんばかりに追い返されたりする毎日でした。

独立前の会社では、専門の営業がいて、コンサルテーションが必要なクライアントは、彼らが専門に獲得してくれていたので、名刺交換のときからすでに、「先生」と呼ばれ、厚くもてなされていただけに、このギャップを冷静に受け止めることが出来ませんでした。

これではまずい、何とかしなければと思い、ある夜、異業種交流会に出席してみました。なかなか名刺を出す勇気がなくどうしたらよいものかと考えあぐねていたところ、笑顔の綺麗な女性が、声を掛けてくれました。

「はじめまして。私、橋本幸子と申します。職業は、ビジネスコーチをしています。ご参加ははじめてでいらっしゃるんですか?」

「は、私は、経営コンサルタントをはじめたばかりの綿谷利男と申します。初めての参加です」と挨拶をし、もう何度も踏みにじられている名刺を躊躇しながら出しました。橋本さんはとても活発な人で、大勢の人から声を掛けられる顔の広い人で、多くの人と朗らかに話しているのを見て、うらやましく思いながらも、この会で自分がどうしたらよいのかがわからず、ずっと橋本さんを頼りに、行動することにしました。積極的な橋本さんの真似をしてみることにしたわけです。合間を見て橋本さんは、「ごめんなさいね。お声を掛けてくださる方が多くて。何だか落ち着きませんね。ところで、今日初めてお目にかかった方に失礼だと思うんですが、何か、悩んでいらっしゃることがあるようですが、いかがですか?」
と話しかけてくれました。

綿谷さんは、(初対面の人にどうしてそんなことがわかるのか。コーチをしているといっていたから職業がら誰にでもそういって話しかけているのではないのか。占い師が道行く人に声をかけるように、私に話しかけたのではないのかな。ちょっと追及してみてやろう)少し意地悪な気持ちになり、「どうして、悩んでいると感じられたんですか?」と質問してみました。橋本さんは、あっさり、「ため息の回数と深さです。この会場に入ってからずっとため息をおつきでしたよ。ご自身の行動に気づいていらっしゃいましたか?」と、にっこり笑っておっしゃいました。

綿谷さんは、この会場に入ってから、ずっと一人ぼっちで居るようなさびしさや疎外感を感じていたのですが、橋本さんはずっと見ていてくれたようです。

「この人になら、胸のうちを明かしても笑われることはない」。直感で判断した綿谷さんは、率直に胸のうちを明かしました。

「今年の春に独立したんですが、思ったようにいかなくて・・・」

ずっと静かにうなづいて聴いていてくれた橋本さんは、綿谷さんの話に、「そう、大変な思いをしたんですね」とか、「悔しかったんでしょうねぇ」と、綿谷さんが避けて表現しない心の中を、実に見事に言葉にして表現しながら、どんどん、話を聴いてくれました。

綿谷さんは、橋本さんの対応につられて自分の気持ちを話し続けていました。

十分ほどの長話になってしまったことに気づいた綿谷さんは、「橋本さん、ごめんなさい、あなただってここには何かを探しにいらっしゃってたんでしょ?僕が邪魔をしていますよね?」と、率直に橋本さんにお詫びしました。

すると橋本さんは静かに言いました。「綿谷さん、今のその心遣いを、企業周りの飛び込み営業でもしていましたか?兎に角、自分のことを売り込もうとして、自分のことばかり話して相手の都合など気にしていなかったというようなことはないですか?」。綿谷さんは、心臓をナイフでえぐられたような衝撃を感じたように、体をまっすぐにし、頬を紅潮させながら橋本さんに答えました。

「僕は一生懸命、自分のために契約してくれることばかりを探していました。そうですよね。誰だって邪魔されたくない話の途中や、仕事の途中で、人の話には付き合いませんよね。なぜそんなことに気づかなかったんだろう」

「そうなんです。話というのは相手のためにすることであって、自分のためにするもんじゃないんです。心底、相手のためを思って真剣に話していると相手の琴線に触れることになるわけです」

「どうもありがとうござます。橋本さんと出会えただけでもこの会に参加した意義がありました」

綿谷さんはこの夜をきっかけに、今は橋本さんのコーチングを受けながら、個人事業主を楽しんでいるそうです。

そして、この半年の間に、顧問先は三社になり、目標まであと二社を目指して日々、営業に励んでいるそうです。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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