コーチング事例集:コーチ養成講座で実践的なコーチング技能と資格取得を。セミナー、研修、コーチングであなたの課題を解決

コーチング事例集

女性の仕事ぶりについての悩み~テーマどおりに進められないセッションの組み立て方~


下着販売メーカーの人事係長村瀬さんは、家事・育児と仕事を両立させているスーパーレディで、これまでも大勢の女性社員のよき相談相手になっていました。全国各地を飛び回るハードな仕事ですが、村瀬さんはいつ眠っているんだろうかと同僚が心配するくらい、精力的に活動し職務に励んでいました。
そんな村瀬さんのコーチングセッションは、いつもは、合理的に行動するための計画や、目標・目的確認をテーマに行っていますが、今日は少し様子が違います。

「めずらしく気分が沈んでいるようにお見受けしますが、私が少し村瀬さんの感情に過敏なだけですか?」
「ソフトに忍び寄ってくる影・・って感じですね。コーチの心が寄り添うこの瞬間にほっと救われます」

「ありがとう、今までの経験から申し上げますが、村瀬さんが叙情的な言葉を出すときは、たいてい大きな悩みを抱えたときだと思いますが、今感じられているのはどんな悩みですか?」
「え?私ってそんなに分かりやすいですか?」

「ええ、申し訳ないけど、少なくとも私の前では、とてもいつもご自分に正直でいらっしゃるように感じています」
「なんでも見ているんですねぇ」

「そしてもう一つ、村瀬さんは、言いたいことはあるけれどもはっきり表現していいかどうか迷うときには、いつも話を遠回しにし始める。これも、村瀬さんのコミュニケートの癖ですね」
「うん・・今日はなんだかコーチがどんどん攻めてくるような気がします」

「ああ、それは申し訳ない。そんなつもりはないんですが。ところで、今日はどんなテーマでこの時間を過ごしましょうか?」
「女性として自分の仕事を追及したいという気持ちが高い人は多いけど、なんとなく、ご主人や子供を言い訳に曖昧にというか、甘えて仕事している人がこのごろ増えてきていて、こういう人達に対してどういうふうに意識を変えさせたらいいのかなぁと思って」

「うん、女性が仕事を続ける難しさを感じているんですか?」
「いえ、女性自身が甘えているのが気になるんです」

「うん、なるほど」
「実際、女性が仕事をするとなると、たくさんの障害がありますでしょ? 子供が急に病気になると保育園や学校に迎えに行くとか、家事は主婦がして当たり前とか。夫が働くことに賛成しないとか」

「そうだね、現実はやはり女性は家事と育児に専念してもらい、男が稼げばいいという考えはありますね」
「コーチもそうなんですか?奥さんを『働かせたくない派』ですか?」

「いや、我が家は妻もコーチ兼社労士として仕事をしていますから、お互い自宅の部屋の事務所にこもったままで、顔を合わせないことが多いですよ。夕方になって、子供たちが戻る頃、夕飯の支度に降りてきて始めて、あれ?今日はいたの?と言って、怒らせたこともあったくらいだからね」
「奥様は幸せですね。仕事に全力投球出来る」

「でも、私は不自由するときがあるし、料理もさせられるし。大変だよ」
「やっぱりコーチも、させられるという言い方になるんですね」

「ああ、うっかり。どうしても家事は女性の仕事だという概念が捨てられない。だけど、私は彼女が出張だったりすれば、子供たちの食事の面倒は見ますよ」
「代理店の女性は、主婦が多いんですが、みんな、入るときは社会とつながっていたいというんです。ところが、半年もたつと元気がなくなってくるんです。やれ子供の病気だ、父母会だと言い訳して仕事を中断するし、たとえ、売り上げが上がらなくてもその理由をほかに求めようとする。職場で事務処理しているかと思えば、だんなの悪口三昧。『やれ協力しない』とか、『うるさいことばかり言われて働く気がなくなる』とか。仕事をすることで自分の人生を豊かに出来るけど、家族という枠の中で、家族というチームのメンバーだけど社会に出るわけだから、それなりの工夫や協力を取り付けたり、ルールを作ればいいと思うんです。現実にはそんな物分りのいい旦那なんかいないし、子供も大きくなればなるほど手伝わなくなるし。与えられることよりも、工夫して自ら行動して欲しいんだけど・・」

「うん、耳が痛い。世の女性がみんな村瀬さんのように自立した女性になると、男はもっとなまけものになってしまうかもしれないな」
「みんなに言われるんです。村瀬さんは特別って。私は特別じゃないと思うんです。
はなから私を特別だと思っているから、みんな、努力したり工夫したりしない。それでもいいのかもしれないと思うときもありますが、せっかく教育して研修させても、1年くらいでやめられたら、企業は損失が大きい。会社での仕事は自分を成長させてくれるものという考えを持っていなくて、自分勝手なんですよね。みんな。だから、職場での評価も上げようがない」

「村瀬さんは、女性達の意識をどうして変えたいのですか」
「それは・・・、彼女達の働く意識を高めたいというか、成長して欲しいわけです」

「そもそも、彼女たちはどんな意識で働きに来ているか、理解していますか?」
「社会に出たいという気持はなんとなく感じますが、働く意欲とか理由はあまり考えたことがないですね」

「村瀬さんはどんな理由で働いているんですか?」
「うん、私は子供の教育費のためにと、一人でも多くの人に仕事を通して成長してもらいたくて、その応援をさせてもらいたいので・・という理由ですかねぇ・・」

「村瀬さんが働く意識と、多くの女性の意識と、一番の違いは何ですか?」
「意欲かなぁ・・なんか違う気がする。責任かなぁ・・。何でしょう・・・」

「相手を理解しなければ、相手の意識を変えることは出来ませんか?」
「本質が変わらなければ、表面だけ変えてもまたすぐにくじけるでしょうから・・。相手を理解したいんですが、みんなが私を理解出来ないように、私も相手が理解出来ない。したくないのかも知れない・・甘えているあの人たちを理解してもしょうがないと思うということは相手への配慮はないかもしれませんね」

「厳しさをもっているのが村瀬さんの自立の証だと感じます」
「私は自立しているのかしら?私が他の人と違っているだけかも知れないと、このごろでは自信がなくなってしまって」

「村瀬さん、今日のセッションのテーマは働く女性の意識を変えさせたい、甘えをなくさせるには?ということだったと思います。本来のテーマから離れた展開になってしまって申し訳ないと思いますが、今、話してみて何を感じていますか?」
「私自身が、まず、落ち着いて考えを整理する必要があるということですね」

コーチングは、必ずしも用意されたテーマどおりに話が進むばかりとは限りません。そんなときも、あわてず、クライアントの話したいように進めていくことをためらわず、自信をもって会話を進めましょう。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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コーチングは誰のためにすることでしょうか~コーチングを職場に導入し成功させる要素の一つ「自分の姿勢」~


技術課長の棚橋さんは、精鋭な部下一〇名を持つ中間管理職として、自ら率先して仕事をこなし、また、会社とは別に、地域の青少年の健全育成のためのボランティアに励む、熱血ビジネスパーソンです。
そんな棚橋さんが、いつになく憮然とした表情で、コーチングのセッションをスタートさせました。

「夏休みは、楽しまれましたか?」
「ええ、私は長男なので、墓参りとか供養とか、それなりに家庭での役割もありますが、それを除けば、日ごろ読みたいと思っていた本を三冊、乱読ですが出来ましたしね。私は有意義に過ごせたと思います」

「それは何よりですね。充実した夏休みを過ごされたのですね。それにしては、私には今、棚橋さんの表情に精細さがないように感じられますがいかがですか?」
「あはは・・いつもストレートですね。だから、あなたは私のコーチなんですね。実は、今年入社した社員が、大きな設計ミスを犯していることが分かったんですが・・」

「製品になってしまったんですか?」
「いや、図面の段階でしたから、会社としての損失はたいしたことはないんです」

「それはよかったですね。発見されたのは、棚橋さんですか?」
「ええ、そうです。なんとなく、うん・・・勘が働いたというか・・」

「何か、おかしいかもしれないという気持ちをもたれたということですか?」
「ええ、まだ、報告とか相談とか、そういうタイミングが分からないらしくて、なかなか報告してこないことに気づきましてね・・」

「『ほう・れん・そう』の習慣が身についていないということですね?」
「はい、そうです。係長には指導しているんですが、なかなかプライドの高い子で、相談してこないようで、係長も手を焼いているんです」

「それは大変ですね。入社1年目は、業務に慣れるのに精一杯なはずなのに、一人で仕事を任せるとは、勇気ある育成方法ですね」
「いやぁ、褒められたことはないですよ。人手が回らなくて、放任しているという状態に近いからです」

「どこの職場も同じですね。ところで、その彼の設計ミスについてはどんなふうに本人と確認しあったんですか?」
「図面を書いているデスクへ僕が行って、ちょっといいか?と声をかけて話を聴いたんです。本人に指示された内容について本人から聴とっていたんですが、どうも、それじゃ、図面が違うと思ったんです。そこですぐに指摘しても良かったんですが、せっかくコーチングのスキルを勉強したわけですから、まずは、本人の話を黙って聴こうと思いまして、最後まで聴いたんです」

「傾聴ですね?学ばれたスキルを使ってみようという姿勢、とても素敵ですね」
「ありがとうございます。話を聴いていながらも、図面を見ると、どうも違うんですよね。指示された内容と、出来上がった図面は、微妙にですが、ずれがあるんです。それで、図面と指示が違うと思われる点を三つほど指摘したんです。そうしたら、ムッとした表情で、『係長はそんなことは言いませんでしたし、聞かれなかったから、私は言わなかっただけです』と、切り口上で返されてしまって・・」

「ついつい、大きな声を上げた?」
「よく分かりますね・・。コーチングの研修をし、若い社員の育成に発揮しようというのが僕の半期の目標ですからね。自分の目標も達成出来なくなるし、部下のためにもならないと思って、我慢しようと思ったんですが、『聞かれなかったから言わなかった』という、あまりにも他人任せな姿勢に腹が立ってしまって・・」

「そうですね。『聞かれなかったから言わない』というのは、他人任せな姿勢ですね。残念ですね。棚橋さんは、部下本意の育成を願って、コーチングの研修をし、職場で実践されているわけですからねぇ」
「うん・・。一つ厳しいことを申し上げてもいいですか? 棚橋さん、コーチングは誰のためにあると思いますか?」

「え??相手のためでしょう」
「うん、そうですよね。この場合の相手とは『聞かれなかったので、言わなかっただけ』の彼ですか?」

「そうです。あと、係長もかな? 報告や連絡は待っていてはだめで、自分から取りに行くことに気づかなければ、今回のようなミスを犯される。『聞かれないから言わない』と言うほうも言うほうだけど、そういう教育しか出来てないことがわかってよかったと思いますよ」
「では、先ほどの言葉尻をつかむようで申し訳ないんですが、ご自分の目標が達成出来ないという気持ちについてはいかがですか?この場合、ご自分の評価を気にされた発言であると感じたのですが」

「あ・ん?・・・」
「本人の目標の達成を残念に思うのと、ご自分の評価を気にされるのとでは、コーチング姿勢が変わってくると感じますがいかがですか?」

「あはは、おっしゃるとおり、私は自分の評価をまず気にしました。さすがコーチは名コーチだ。どうしてそう感じたのか教えてもらえますか?」
「一つは、表情です。ご自分の目標が達成出来ないとき、いつもセッション中に見せる表情があります。でも、今日はいつもとは違った表情でした。あきらかに、自分の評価にこだわりをもたれているような表情でした。それをどんな・・と聴かれると、絵もうまくないし、お伝えするのは難しいので、勘弁してもらえますか?」

「ああ・・・憎々しい表情だったかな?目がきついというか、目つきが悪いといわれたことがあるけれども、相手を追い詰めようとするとき、僕が見せる眼をしていたのかもしれないな」
「うん、そうですね。目つきが悪いというか、怖いほど強く何かをにらんでいる。そんな感じではありました」

「そうでしょう、いやぁ・・いかんなぁ・・。くせだなぁ・・。自分がどんな顔して相手と向き合っているかなんて考えもしなかった。僕はたださえ強面だから、怒られたと誤解したのかも知れないなぁ」
「今後に向けて、確認したいのですが、ご自分の目標の達成と、部下の支援との間に距離があるとき、棚橋さんが気をつけたほうがいいと思うことはなんですか?」

「うん、まずは部下のためにあれ!という言葉を思い出すことですかね。自分の目標は自分のものであり、まずは、コーチングを通して、部下が自立して少しでも早く一人前になることを忘れないようにしなければならないですね」
「そうですね。コーチングは相手の支援を目的に行うという基本を忘れないでいただければと思います。ところで、来週までの1週間の目標についてですが・・」

「はい。今日のセッションを受けて、若い奴や係長との接しかたを考えてみます。彼らのためになることに気づいたら、それを実行してみることにします」
「そうですね。是非、実行してみてください」

棚橋さんのように、コーチングを通して部下の育成を自分の目標にされた場合、板ばさみとなってストレスを感じることがありますが、コーチングは相手を支援し続けるという姿勢を貫くことが大切なことを、改めて学びました。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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損保会社の調査員としてキャリア三年の東さん~上司とのコミュニケーションミスがきっかけの転職~


当初は、契約者の負担をわずかでも少なくし、また、被害者の方にも納得いただける調査をする契約社員として実績を上げてきましたが、仕事にも慣れてきた二年目を過ぎる頃から、この仕事が本当に自分に向いているのか、疑問を持つようになりました。三年目に入った春ごろから、上司から指示された調査を深くせず、あれもこれもと仕事を抱え込んだり、お客様への説明にも力が入らなくなったり、このままでは、正社員としての契約を結ぶことは出来ないと、上司から引導を渡されてしまいました。
東さんが、コーチングを知ったのは、Webの情報検索からで、藁にもすがりたい思いから、何か解決の方法がないかを探ったからだといいます。

「1年目と二年目、そして現在と、東さんの中で何が変わったんでしょうか?」
唐突かな?と思いながらも、少しでも早く状況を把握するために、コーチは率直な質問を早い段階で投げかけました。
東さんは、「うん・・・、言いたいことをはっきり言えなくなったということが一番大きな原因だと思うんです。実は・・・」

「実は・・・って何か思い当たることがあるんですね」
「・・・・・・・・・・」

「言いづらいことなんですね。どうしてもお話したくないことは、無理に話さなくてもいいんですよ」というコーチの表情に、東さんは意を決したのか、大きく息を吸って話し始めました。
「上司が変わってから、なんていうか・・コミュニケーションがうまく取れなくなったって言うか、報告はまだ出来るんですが、相談したいなぁと思っても、うまく話せなくて、いつも上司に答えを先に言われてしまうんです。それも、自分が考えているのではなく、その上司のこれまでの経験から答えがわかっていると言わんばかりの態度・・・、最初から、何だろう・・決まっている答えを聞きにいくだけで、それが自分の考えと違う答えだから、よけい混乱するし、第一真似をしろって言われても、出来ないんですよね。だから、相談出来ずにいたんです。そうすると、だんだん、報告するのも億劫になっちゃって・・・」
暗い表情で、東さんはボソッと答えてくれました。

「上司が変わったのはいつですか?」
「二年前の春の定期異動です。女性なんです」

「どんな上司なんですか?」
「今の上司。とてもすてきな人ですよ。結婚していらっしゃって、家事や育児と両立されている。女性にありがちな感情の起伏も激しくないし。キャリア・ウーマンって感じかしら。
でも、だから、すっごく近寄りがたいって言うか、別の世界の人って感じで私たちを見ている気がするんです。女性社員が固まっておしゃべりしていても、脇をスっと黙って通り過ぎられ、おしゃべりに加わることがない。
かといって、私たちに興味がないわけではなく、飲み会しようかとご自分から誘ってくださったりもします。みんなは、いい人だね、付き合いやすい人だねって言うんで、ますます、自分がどうもあわないみたいとは言い出せなくなってしまいました」

「なるほど、みんなと受けた印象が違うだけに、言い出せなくなってしまったんですね。でも、それと上司への報告をしないということは、別の問題だったように思いますが、改めて考えてみて、報告の義務を怠ったことについてはどう思いますか?」
「たしかに、契約社員としては失格だと思います。ただ、上司は選べないから、あわない上司と出会った場合、どうしたらいいか、そんな経験もなかったので負けず嫌いがでたというか、自分だってそれぐらい報告して指示を仰がなくても出来るって小さな抵抗をしてみたというか、悪気はなかったんですけれどもね・・。
深く考えずに行動した結果が、正社員としての採用を見送られることにつながるとは思っていなくて・・・。取り返しのつかないことをしたなぁと、後悔でいっぱいです」

「後悔でいっぱい。あなたがとても辛い気持ちでいることが理解出来ます。東さんがいま、一番解決したいことはなんですか?」
「残りの契約期間を少しでも楽しく働くために、もう一度、上司との関係をやり直してみたいんです。でも、どうしたら良いか分からなくて」

「上司と仲直りをしたいということですか?」
「いや、仲直りではないですね。信頼される部下となって、仕事をしてみたいです。彼女のように出来る女性になれたら良いですね」

「ロールモデルとなる人なんですね?」
「ええ、そうですね。ロールモデルとしてみればよかったんですね」

「上司との関係をやり直しするために、今、あなたには何が出来るんでしょうか?」
「うん・・・難しいですね、私への信頼感がないわけですからね。どうしたら信頼を取り戻せるのでしょうか?」

「どうでしょう。本当に信頼感はなくなっているんでしょうか?」
「うん・・・聴いたことはないですけど、自分が上司だったら、信頼しませんよ、こんな部下」

「そうですか。あなたがとても残念な気持ちでいることが痛いほどに伝わってきます」
東さんは、初めてのコーチングのセッションのあと、こんなことをつぶやきました。
「もっと早く、自分の気持ちを打ち明けていたら・・・。話を真剣に聞いてもらうことでこんなに楽になれることを知っていたら・・・」

この一年を待たずして、東さんは転職していきました。コーチングのテーマも、上司とのやり直しから、転職に変わっていきました。どんなに計画を立てても、どんなに目標を見直しても、その会社でのやり直しの方法も、勇気も見出せなかったからです。
目標を立てても、実行に移せない。目標があるだけに、行動出来ずにいる自分を引け目に感じてしまう。
目標を立ててそれに向かって行動していく。そのために今の自分に不足していることは何か。それを克服する手段はあるのか。どんな方法で行うか。自分でそうするつもりがあるか。目標・ビジョンを考えて前に向いていくことは、とても大事なことです。しかし、時によっては、目標を修正して新たな目標に向かってすすむことも、選択肢の一つなのです。
今回の事例を読まれて、東さんが自分の非を認めることによって、十分にやり直すことが出来る。転職などそう簡単には出来ないのだから、今の会社でやり直すべきだ。私ならそうするし、私がコーチならそういう方向に導く自信があるとお考えの方もいらっしゃるでしょう。しかし、コーチの気持ちを押し付けるのがコーチングでしょうか。クライアントを支援するのがコーチの役目なのです。
この場合、「上司とのやり直し」に向けて支援するのもコーチングですし、「転職」に向けて支援するのもコーチングです。最終的にそれを決めるのは、クライアントである東さんだということです。
思い切って目標を変えることで、自信を取り戻した東さんは、新しい職場に馴染むまで、コーチングを続けようと決心しています。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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ビジョンコーチングの重要性に気づいためがね屋さんのカリスマ店員~自己奮起力を高め、将来にむけてビジョンを立てる~


販売が天職だという仲野さん。彼は、その人の顔立ちや表情を引き立てる、人の個性にぴったりフィットするフレームを売るめがね屋さんの社員です。もちろん、度をあわせる腕も非常によく、彼の手にかかると、どんな人も、これが私?と疑いたくさえなるような魅力ある「めがねと人を出会わせるコーディネーター」として活躍しています。そんな彼が突然、職場を変わりたいと、相談に来たので、びっくりしながら、セッションにのぞみました。

「仲野さん、どんなことがあったんですか?」事実を確認するために、まずは質問です。

「会社が合併して、相手先の会社の社長が新会社の社長になったんです。社長が変わって、経営方針が変わっちゃったんですよ。これまでは高級路線出来ましたが、『時代が変わったのに気づかない社長だったから、この会社は、うちに吸収されたのです』と、新しい社長の挨拶は、これまでの社長の仕事やり方を全部否定するような方向の話ばかりだったんです」

大きなため息をつきながら、仲野さんは話します。

「そんな就任の挨拶を聞いていて、僕は、この会社にこのままいてもいいのかなぁ・・という気持ちになってしまったんです。これまでの社長には、大変目をかけてもらっていたし、新しいフレームの輸入に成功して社長賞をもらったのも、社長の『自信もってやって来い!』という後押しがあったから出来たことであって、決して自分一人で出来たわけじゃないと思うんです」

「仲野さんは、社長の信頼を得られていたんですねぇ・・」
「吸収合併だから、僕たちの会社の社員は、これからどんどんリストラされるってうわさもあるし。僕なんか、一番最初に目をつけられますよね?前の社長にかわいがってもらっていたんだから・・・。なんだか、ますます気が滅入ってきちゃいます」

「私には、あなたの不安な気持ちも理解出来ます。が、このほんとうにリストラされるのでしょうか?」
「だって、私は社長からの信頼をいただいていた、いわば、子飼いの社員なんですよ。あの新社長の話しぶりでは、前の社長が敵だと言わんばかりなんですから・・」

「戦国時代のようですね。ちゃかしてごめんなさい。敵とか味方とか、そういう色分けをしている根拠を何か感じるのですか?」
「いいえ、別に根拠はありません。新社長の言葉から、私がそういうイメージをもっただけかもしれません。でも、私の直感は当たるんです」

「直感が当たるんですね。それでもそれは仲野さんの直感であって、根拠があるわけではないんですよね?」
「そうですね・・・根拠はありませんねぇ。でも、普通、ニュースなどを見ていると、吸収された側の社員が悲哀を味わうということになっていますよね。僕たちの会社が食われたんだから、やっぱり社員はリストラされるか、一生、役職にはつけないということじゃないでしょうかねぇ」

「仲野さんは、今回の企業合併をどのように考えておられるのですか?」
「会社の負けです。そして私自身の人生の敗北ですかねぇ。社長だったわけじゃないけど、会社のために、一生懸命働いてきたわけですからねぇ。それは、給料のためだったし、いつかは
役員になって、この会社をもっと大きくしようと思ってやっていたことなわけで。その頃から考えたら、敗北ですよ。私の人生、もう終わりだな」

「そうですか・・。仲野さんの人生は敗北で終わってしまうという気持ちなんですね」
しばらく沈黙の時間の後、コーチは冷静に次の質問をしました。
「ところで仲野さん、仲野さんの人生を描きなおすとすると、どんなふうに描きなおすことが出来ると思いますか?」

「それは、タイムマシンにでも乗って後戻りするならということですか?そんなの無理ですよ。今の状況を認めないで、過去にさかのぼって人生を描きなおしことに何の意味があるんですか?私はそんな過去にこだわらずに、先のことを考えて転職しようと思っているんです」

語気を強めて反論する仲野さんに対して、

「いえ、過去のことにこだわって思い出に浸ったり、やり直せれば思うのではなく、人生を描きなおしてみるということはこの先の仲野さんの人生をどう設計するかということなのです。会社は吸収されて新しくなったんです。仲野さんの人生が仕事と切り離せないものであるなら、この変化をチャンスとして利用することを考えましょう。仲野さんの人生は終わったわけではなく、新しくなったんです」と、コーチは穏やかに言いました。

「チャンスですか。なるほどそう考えることも出来ますね」
「そうなんですよ。変化はチャンスなんです。新しいことを考えるとしたらどうですか。この先楽しくなりませんか」

「確かにここから新しい人生が始まるわけですね。くよくよしていても始まりませんね。ここは一つこれから何をしていこうか五年先、十年先を見据えながら考えてみることにします」。
「そのとおりです。五年先、十年先を見据えて今日から何をしようかと考えて、それを実行に移しましょう」

「コーチのおっしゃるとおりですね。五年先、十年先を見据えながら考えてみるだけではだめですね。今日からの実行が伴わないといけませんね」
「そうです。実行しましょう。しかし、一度に沢山のことをしようとすると無理も生じますので、あせらずじっくりと考え、考えがまとまったらすかさず行動することにされたらいかがでしょうか」

人は、予期しないことが身に起きると、自分の勝手な思い込みによって、自分の心に待ったをかけるかのごとく、行動することを放棄してしまうことがあります。そしてその思い込みは、しばしば全く論理的ではありません。新しい事態ですから、ここで一度立ち止まって、どうしてこうなったのかと、原因を究明することは確かに大切なことですが、過去に原因を探しに行っても、その過去が変わるわけではありません。それよりも、むしろ、この変化をどう捉えて、目標の修正や人生のプランを描きなおすことを考えて、1日も早く行動し始めることが大切です。目標を立て、戦略を考え戦術を立てる。
縮こまっていないで自己奮起力を高めて行動する。行動した自分を自己承認しながら更に自己奮起力を高め、次に進む。
そうすることによってまた新しい未来が開けてくるわけです。意気消沈しているときこそ、将来に向けってビジョンを立て行動に移る、ビジョンコーチングが重要になります。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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私の居場所がないように感じられて・・・ベテラン社員の悩み~職業人としての自分の価値を考える~


今日はベテラン社員の榊原さんのコーチングの日です。どんな会話が出来るのか楽しみに待っていましたが、榊原さんは、私の顔をみるなり、
「私の居場所がないように感じられて・・・」。

勤続二十年。まじめにこつこつと、会社のことだけを考えて仕事をしてきた自負があるとおっしゃる榊原さんは、いきなり話し始めました。
コーチングのセッション(会話すること)では、その日のテーマを扱う前に、気持ちをほぐす目的で、本題とはまったく違う話(アイスブレイク)をすることがあり、コーチである私は、今日もアイスブレイクからスタートしようと漠然と考えていたので、すぐには、傾聴の耳が用意出来ませんでした。
いつもはおだやかに時候の挨拶から始める榊原さんが、今日に限っては突然、本題を喋り始めたことを意外に思いながら榊原さんの話を聴いていました。

「榊原さん、会社に居場所がないと感じたきっかけは何かあったんですか?」

やっと榊原さんが考えをまとめるにふさわしいと思う質問が準備出来たのは、つぶやくように言った榊原さんの声からかなりの間があったと思います。
榊原さんは、私の問いかけに対し「いえ、別にこれということではないんです。この二月、異例の人事異動があって、課長が転勤されてきたんです。それから1ヶ月。まだまだ何もお分かりになっていらっしゃらないためか、うちの支所では一番キャリアが長い私を頼りにしてくださっているんです。
ただね、キャリアは長くても、結局チームのメンバーは、肝心なことの相談は課長にしてしまうわけです。当たり前ではあるけれども、淋しくてね。課長も一応は私を立てて話の輪に入れてくれるわけですが、結局決めるのは課長のわけです。私の今までの経験を踏みにじられているような気がして、たまらないんです。私って、どんな存在なんだろうって思う。そう思うと、ただ、キャリアが長いだけで、何にも価値がないように思えてしまって、最近では会社に行くのも嫌になったり、若い者から相談されても、課長に聴けばいいじゃないかって厭味を言ったりしてしまうんです」

一息に榊原さんは、話してくれました。

「榊原さん、あなたにとって、会社が認めるあなたの価値って、どのくらい大事なことなの?」

答えがわかっているようでも、あえて本人が話すことによって再確認出来る自分の思い。コーチングが大事にしている基礎に忠実にコーチングを進めてみました。

「そりゃあやっぱり大事ですよ。インセンティブ(報酬)で評価されるわけでしょ?ビジネスパーソンって。だったら、見合うというか、評価してくれた価値の分だけ、給料や役職で表すしかないでしょう。だから、会社が自分の価値をどのくらい認めてくれているかは大事だよ」

当たり前のことをたずねられたからか、榊原さんの口調がいつもよりきつく感じられました。しかし、ひるまず、「あなたがお考えになるあなた自身の価値を百点とした場合、会社はあなたをどのくらいで評価してくれていると思いますか?」と尋ねました。

「点数?そんなこと考えたことはないけれど、四〇点くらいかな?」
「なるほど、四〇点ですね。今置かれている立場、待遇などか四〇点くらいとお考えなのですね。それでは百点満点の榊原さんは、どんな待遇になるんでしょうか?」

「係長という責任ある立場を任されていると思います。係長という待遇もさることながら、メンバーがなんでも相談してくれて、ああ、それはこうしましょうとか、それはこうでしょう?こうしなさいと、指示命令出来るようになるでしょう。そうすると自分の思い通りの仕事も出来るようにあるわけだし・・・」
「なるほど、指示や命令が出来るようになり、自分の思い通りの仕事が出来るのですね。そうすると、チームはどうなりますか?」

「チームは、当然、業績も利益も上げられるから、いい雰囲気になると思います。会社内での評価ももちろん上がると思いますし・・」
「そうですね。業績利益や、雰囲気も良くなるわけですね。社内での評価も上がる。いいことばっかりですね。では、デメリットがあるとすると、どんなことがあげられますか?」

「デメリット?う・・・・ん・・・特にはないんじゃないでしょうかね?」
「特には見当たらなさそうなんですね?榊原さんが考えるご自分の価値は、指示命令をするポジションに立ったとき出来るものなんでしょうか?」

粘り強く、榊原さんが考えをまとめやすい質問を続けていこうと、努力します。

「いやぁ・・・どうかな?指示命令が出来るポジションに立ちたいわけじゃないかも・・」
「なるほど、指示命令が出来るポジションに立ちたいわけじゃない。
では、どんな存在になると価値が上がるんでしょうか?」

「だれもが頼ってくれるような、私と話すと明るい気持ちになれるような、そんな存在になれたらいいかなって思うかなぁ?」
「榊原さんと話すと明るい気持ちになれるといってもらえるような存在になりたいんですね?」

「そのとおり、若い者から尊敬出来る先輩っていってもらいたい」
「尊敬出来る先輩というお立場でいいんですね。地位には固執しないわけですね」

「う・・ん、そうかなぁって思うけど・・」
「ほんとうにそれは望んでいらっしゃることなんですか?」

「うん・・・」
「いい人って思われればいいんですか」

「うん・・・・?」

考え込んでいる時間が長くなってきたセッションの後半。
私は、気長にゆっくり待ちます。

「コーチ、私が考える自分の価値についてもう一度考えてみてもいいですか?」
セッション開始二〇分。榊原さんは、その日のコーチングを終了したいと、自らの言葉で切り上げられました。
「榊原さんご自身のことですから、よく考えてみてください。今日はこれぐらいで終わりにしましょう」

ビジネス環境が大きく変化したからなのか、組織の中の自分のポジションを見直すビジネスパーソンが増えてきました。同時に、いつも感じるのは、仕事をしている人の承認がなされる機会が減っているのであろうということです。
人の三大渇望の一つ。尊重されるということの大切さを改めて感じさせられました。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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