コーチング事例集:コーチ養成講座で実践的なコーチング技能と資格取得を。セミナー、研修、コーチングであなたの課題を解決

コーチング事例集

娘婿に社長職を譲った会長の悩み~後継者を信頼出来ず、復帰しようと考える社長のモチベーションを上げる~

社員一〇〇名の中規模会社を経営する久田さん。事業を継いで四八年。長い社長業の間には、浮き沈みもありましたが、久田さんの昼も夜もない献身的な努力と、もって生まれた抜群の経営センスによって徐々に安定し、社員も次第に増え魅力ある企業として地元に貢献するまでに成長しました。

ところが、自分が会長となり娘婿の太郎さんを社長に据えて会社を渡したとたん、新社長から「お父さんはこれまでずーと会社一筋でやってこられたので、ここらあたりで少しノンビリしてください。会社のことは社長の私に任せてください」と言われてしまったとのことです。始めは頼もしい奴だ、さすが自分が見込んだ奴だと思っていたのですが、そうもいかなくなりました。娘婿の社長から一切の相談がなくなったのです。そして、会社は悪い方に回り始めていました。

まず、社員の定着率が悪くなり、いつの間にか、知らない顔の社員が増える一方になったことに戸惑い、更に、銀行から保証人になって欲しいと言う申し入れを受け、びっくりして税理士に話を聴いて、高かった血圧が更に高くなり一時は入院するほどになったのは、借入金をしたという事実を知ったからでした。

自分が苦労した経験から、久田さんは、一五年ほど前に借入金をすべて返済し、一切借入金をしなくても会社が回るようにと安定させていました。そんな状態にして会社を渡したので、ぜったい大丈夫だと信じていたそうです。

心配になった久田さんは、さっそく事実関係を社長である娘婿に確認しました。娘婿は「お父さん、全く心配はありません。今、会社は、時代の要求に沿える形に脱皮しようとしているところです。全く、問題はありません。お父さんにはご心配をおかけして申し訳けありません。お父さんに心配をかけないように頑張りますし、来年には会長職を離れ相談役にでもなっていただきもっとゆっくりしていただきたいと考えているくらいです」と取り付く島もありません。

こんな久田さんがコーチングを受けるきっかけとなったのは、娘婿との会話がうまく成立せず、イライラした中でコミュニケーションをとっていたのですが、なかなか真実が見えてこないばかりか、よかれと思って娘が間に入ってくれたことから娘夫婦の間にもひびが入り、娘婿の太郎さんが「仕事が忙しいから会社に寝泊りする」と言って家から出て行ってしまい別居状態になったことからでした。

「久田さん、血圧の具合は落ち着いていますか?」
「ええ、あまり良い状態とはいえないようです。ほんとうに情けないことです。もう私の人生も終焉ですねぇ・・」

「気分はあまり優れないようですね」
「ええ・・・婿は出て行ったままですし・・」

「社員の方は?お辞めになる人は落ち着いてきましたか?」
「ええ、これ以上辞める人間はいないようです。それに、婿の強引なやり方に反発していた古参の社員は、私が社長に戻るなら、会社に戻りたいと言いに来てくれています」

「そうですか・・やはり原因は、若社長のやり方だったんですか?」
「そうですね。積極的な販路開拓はいいと思うんですが、営業にかなり無理なノルマを与えたようで。私は既に六八歳です。私が社長に戻るのは、体力的にも精神的にも辛いんですが、残ってくれている社員のためには、それしかないんでしょうか・・」

「久田さんの主治医は何と言っておられるんですか?」
「今のところ、すぐに発作が起きることはないと思うが、ストレスは体に良くないし、何より、社長業に戻るのは賛成はしないと言われています」

「他に、社長を任せられる人は?」
「私を支えてくれていた専務がいたのですが、すでに婿と対立して退社してしまっていますから、呼び戻すにしても、敵前逃亡したような元の上司が社員の信頼を100%勝ち得られるとは思えないんです」

「娘さんは?一番久田さんに似ていると言われている長女の富貴子さんは?」
「富貴子は、少なからず、今回のことで責任を感じているようです。しかし、まだ、子供も小さいし、今から経営の勉強するにしても、お父さんに迷惑かけるし、私が社長になって太郎さんを追い出すようなこともしたくないといって泣いています。そうなると、強くはいえないし・・」

「社員のほかの方は?」
「うん・・・任せられるとは思うんですが、私の会社でなくなるのが、辛い気もしてねぇ」

「会社は一族のものではないと思いますし、まして、あなたのものでもないと思いますが、どうしたいんですか?」
「そうです。私のものでも、私の一族のものでもない。でも、私が苦労してここまでにしたのに、ほんとうに悔しいですね。婿の太郎さえしっかりやってくれればいいんだが、あいつが勝手なことばかりやるから・・・・」

「毎日の業務は、みんながちゃんとやってくれるからいいんだけど、婿の太郎にはもう社長は任せておけない。早く責任のきちんと取れるものが舵取りしないと大変なことになってしまう。取引先や銀行の信頼もなくなっちゃうし・・でも、体のこともあり私には、社長復帰は無理だ、出来ない。医者からも止められている」

三十分間、とにかく久田さんは、コーチの質問や提案に対して「出来ない、受け入れられない」を繰り返すばかりか、自分自身も否定しはじめて、セッションは前に進むことがありませんでした。

すべてに対して、自分の中に答えがあるのに、プライドや見栄のために、最後の一歩を踏み出せない久田さん。「社員は、こんな元社長の姿をどんなふうに見ていると思いますか?」

というコーチのこの日最後の質問に、「情けない、社長として復帰してもらいたくない、受け入れたくないとおもうだろうな」と、慮る姿勢は見せましたが、やはり思い切ることは出来ないようでした。

人間は、仕事や役割によって幾つになっても成長していけるものだと思いますが、いったん一線から外れた人が、再度、前線に戻るには、相当の勇気と相当の理由と、相当の条件を作ることが必要であること、自分自身の考えを変えるために、自分への動機づけが必要であることを、ひしひしと感じる難しいセッションでした。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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職員のやる気なさに悩む介護団体の理事長さん~あれもこれもと問題の渦中にある当事者に、問題の数と優先順位を考えさせる~

高齢者を相手に、デイ・サービスと訪問介護所を経営する理事長の辻さん。このごろは、人手不足もあって、ヘルパーのやりくりに大変な毎日です。ついには、自分がサービスのためにお宅を訪問しなければならないという現実がやってきました。ところが、現場に出てみると、「あらまぁ・・」と思うことだらけで、つい先日は、「あんたが毎日来てくれる人だったらいいのに・・・」と、お客様に言われてしまう始末。現実には、職員に払っている給料も少なく、そんな中でみんなのやる気を高めるためにどうしたらいいのかをテーマに上げた辻さんとセッションしました。

「はい、辻さん、こんにちは。ずいぶん、お疲れの様子ですが何かあったんですか?」
「ええ、この間も急に職員が休暇をとってしまって、私しかいなかったので、急遽、訪問介護に私が出向いたんです。出向いた先で、お客様から日ごろのサービスのあり方について、「メシがまずい」などと小言を言われてしまって、翌日、その職員の顔を見るなり、「あんたたち、ふだん、どんなお料理作ってきてるの?」と、怒鳴ってしまったんです。怒鳴らなければよかったと自己嫌悪もあるし、でも、ホントにどんな仕事をしているのか考えたら、怒らずにいられなくてネェ・・」

「朝から怒鳴ってしまったわけですか?」
「はい、出勤しておはようございますも言わなかったような気がします。職員も落ち込んだけど、私はもっと落ち込んだ気がします」

「落ち込むことが分かっていても、我慢が出来なかったのかしら?」
「はい、今思うと、もっと言いようがあったように思いますが・・」

「今、改めて考えてみて、その職員に、何を伝えたかったの?」
「急に休まれると困るということ、お客様が希望する料理が出来ていないこと。この二つは、事実ですから、すぐにでも改善して欲しいです」

「その二点を、冷静に話し合うために、辻さんが心がけることは何でしょうか?」
「まずは、ゆっくり時間を作ること。私も忙しいので、彼女たちが今話せる状態かどうかを確認しなくちゃと思いながらも、『ちょっと待った』が今は出来ていません」

「いつもは、ちょっと待ったをしながらコミュニケーションをとっているのですね?」
「はい、十分に待ってからしているつもりなんですけど・・」

「十分に待ってから話をする理由は?」
「うん、辞められないようにですけど・・」

「人手の変わりはすぐには見つからないものね」
「はい、そうなんです。見つかってもすぐにお客様と仲良くなれるわけではないし、職員同士の和も大切だし」

「そうですね。ご苦労がよく伝わってきます。でも、一方で、指示や命令を出さなければならないわけですね。現実として・・どんな工夫をしましょうか?」
「事務所は、人がいないときはあまりないんです。かといって、一回は、サービスを受けているお年寄りがどこかに必ずいますし・・」

「ないない、これもだめ、あれもだめ、という考えに戻ってしまいますね。場所を変える、時間を変える、この二つのポイント以外に、何か方法はないのかしら?」
「うん・・・まさか、車の中って言うわけにはいかないし。手紙は書いている時間がもったいないから、口で伝えたほうがいいでしょうし・・」

「ところで、どうしても、辻さん自身が言ったほうがいいのかしら?」
「え?・・副理事長でもいいのかなぁ・・」

「辻さんが、その職員だったとして、誰なら言われてもいい?」
「そうですね、やっぱり役職者でなければ、『何であんたに言われなきゃいけないの?』って思いますけど、理事長の私でなくてもいいかしら?」

「なるほど、理事長である辻さんじゃなくてもいい。それなら、誰ならいいのかな?」
「そうですね、訪問介護の職員は、リーダー制にしてあるから、リーダーでもいいかな?」

「そうですか、リーダーでもいい。では、リーダーさんとはいつ、話しますか?」
「リーダーも、現場には行っているわけですから、やはり、戻ってきた後かな?」

「本人にしても、リーダーにしても、戻った後のほうがいいわけですね」
「何を伝えたいんですか?ただ、小言を言われたという事実だけですか?」

「事実は事実として言って、私の気持ち、どうして欲しいとかこれは止めてほしいとか、そんなことかな?」
「それから?」

「うん・・・よくやっているという点も褒めてあげたい」
「褒めることと、小言を言われたという事実と、注意点を挙げるのかな?」

「はい、そうですね」
「それを、リーダーに伝えてもらうって感じかな?」

「そうですね。リーダーにまずは理解してもらって、間違いなく伝えてもらう」
「それが伝わると、職員はどんなふうに変わっていくんでしょうか?」

「うん・・行動がぴりっとしてくれたらいいな」
「なるほど、行動をぴりっとさせて欲しいのね?それから?」

「行動が変われば、お客さんの満足が高まって、職員も充実感が高まるんじゃないかな?」
「職員には、充実感を高めてもらいたいの?」

「給料がたくさん出せないから、どうしてもやる気が出ないんだと思う。だから給料を上げるわけにいかない以上、職員が自分自身でやりがいをもって仕事をしてもらうようにしないと、どんどん辞めていってしまうから・・」
「二つの視点があるようですね。給与の問題と、職員のやる気はリンクした問題だとは思いますが、だからと言って、いい加減な仕事をしているのではないか?と、辻さんが職員に意見をするのは、別の問題だと思うのですが、いかがでしょうか?」

「え?給料が安いから、やる気が出ないんじゃないでしょうか?」
「確かに、リンクした問題だと思います。でも、それとこれとを一緒に考えないほうがいいと思うのは、給料が多いから、少ないからやる気が出ないとか、行動が雑になっているというのは、辻さんの憶測でしかなく、事実かどうかわからないからです。事実を元に、行動を改めてもらいたいのであれば、まずは、仕事を大雑把にしないで欲しいという辻さんの考えを、リーダーに理解してもらい、間違いなく第一線の職員に伝えてもらうことじゃないでしょうか?」

「・・・」

深く考え始めた辻さんを前に、コーチは辛抱強く、このセッションを続けました。
当事者は、問題を抱えると、ついつい、渦中にいるために、問題の本質さえ理解することが出来なくなってしまい、結果、ミスコミュニケーションを起こしてしまいます。
コーチは、冷静に、客観的にクライアントの問題を見つめることが出来るからこそ、的確なアドバイスや、考え方を提示することが出来ます。コーチングは、自分以外の目を持つことが出来ることも、魅力の一つではないか?と、改めて感じるセッションでした。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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若い起業家へのコーチング~戦略を立て、実行する経営者の支援にコーチングが有効であることに気づく~

起業をめざす人が増えています。若い人の場合は、職業経験年数も浅く、経営や人材育成に関するコンサルティングと、これまでの職業経験をいかにつなぐか、あるいは、いかに次の問題を引き起こさせないようにするかという防衛のためのコーチングセッションをご紹介しましょう。

「こんにちは、長田さん」
「こんにちはコーチ、前回は、適切なコンサルテーション、ありがとうございました。ホント!助かりました」

「お役に立てて、嬉しく思います。企業にとって、情報管理は重要な問題ですよね。今回は、たまたま早く分かったから良かったですが、派遣社員の人が家に仕事を持ち帰って家で仕事をされていたわけですよね、その結果、もしも顧客データを流失させたらトンでもないことになっていましたね」
「はい、正社員でない人については、私はこれまで社員として人材派遣会社からの社員との付き合いしかありませんでした。これまでは、同じ社員という立場で付き合っていましたが、派遣社員とはいえ、仕事熱心な人は、仕事を家でするために情報を持って帰ることが現実にあるんだということを考えていなかったので、正直、派遣社員の人を見る目が甘かったなと感じました」

「なるほど、これまでは同じ立場の社員だから、人材派遣会社の社員の立場をしっかり認識していなかったということでしょうか?」
「ええ、そうですね。使ってみてはじめて分かったことは、彼らの不安定な立場が理解出来ていなかったことですね。しかし、だからといって、私には正社員の管理をするという役目があるわけですから、派遣の社員ばかりにかまうことも出来ず、難しい立場だなぁと思いました。すべての社員の一人ひとりを、それぞれ、個別に管理するなんて、自分には到底出来ないと思いましたね・・・」

「なるほどね、一人ひとりを、それぞれに個別に満足させようとするような管理は、大変だということを学ばれたわけですね」
「はい。派遣会社の社員だからとか、自分が雇った社員だからということで区別はしてはならないと思いますが、実際には、手が回りません。派遣会社の社員の管理は、出来れば派遣元にお願いして、自分の社員の管理にだけ全力投球させてもらえたら・・と思いました。その上、今回のように顧客データを持ち帰って、自宅で仕事しようという人が出たことは、嬉しい反面、そんな大事なというか、基本的なこともちゃんと説明出来てなかった自分を、責めてしまいました」

「辛かったですね・・。今回、派遣会社の社員は、どうして自宅で仕事をするしかないと、考えてしまったんでしょうか?」
「やはり、私が、厳しく期限を守ってくださいといったことに原因があると思っています。期限を守って仕事をするのは当たり前ですが、残業契約のない派遣社員には、仕事のボリュームが適切ではなかったのではないかと反省しています」

「なるほど、期限を最優先してしまって、働く時間と、作業内容のボリュームが一致していなかったということですね」
「はい、そうですね。残業が出来ないのに、期日を守れ守れじゃ、無理ですよね」

「今回の問題で学習したことは何ですか?」
「はい、働く時間と作業の内容と、ボリューム(量)とのバランスを図らないと、相手を追い詰めるということでしょうか?」

「なるほどね、バランスをとらないと、思わぬトラブルを引き起こすことになるということを学ばれたわけですね」
「はい、そうですね」

「そのボリュームをとるためには、どうしたらいいんでしょうか?」
「はい、まず、もう、自分ですべてを管理しようとすることはやめようと思います。正直いって出来ないということに気づきました」

「具体的にどうしますか?」
「はい、私の下にいる部下に派遣会社の社員の管理を任せることにしました」

「部下に、派遣会社の社員をまとめさせるために、気をつけたほうがいいことは何ですか?」
「先にも申しましたが、派遣会社の社員は、どんなに自分がいっぱいいっぱいであっても、弱音を吐くところがありません。だから、小まめにコミュニケーションをとってもらって、ガス抜きすることだと思います」

「なるほど、小まめにコミュニケーションをとることが重要な要素である。他には?」
「はい、社員と同じように目標を持たせて、1週間、四週間、三ヶ月、六ヶ月の目標と達成について、管理することだと思いました。1日、1日での勝負ではなく、ある程度、長い目で見た目標達成や満足度を高めることが大事だということに気づかされました」

「なるほどね、時間的なゆとりがないからこそ、部下に任せてもいいことは任せる、自分がしなければならないことは自分でするけれども、優先順位をつけながら仕事を進めるということを学習されたわけですね」

「そうですね。私は自分ひとりで仕事をしていた気がします。自分以外の人を信頼していなかったのかもしれませんね」
「それだけ、ご自身にゆとりがなかったのかもしれませんね」

「そうかもしれませんね・・・」
「今回は情報の流出を防げましたが、今後こんな危機感を味わうことがないようにするために、人材管理というか、育成に努めれば防げますか?」

「いいえ、それだけでは完全ではないでしょう・・しかし、完全に防ぐことをめざすよりも、完全でなかったときにどうするかを含めて、企業防衛について、真剣に考えておくべきだと言うことは学習しましたから、社内にPJを立ち上げようと思います」
「人を信じないということですか?」

「そこまでは極端に思っていませんが、どんな場合にも備えがあれば憂いなしと言うことでしょうかね?」
「なるほどね、管理システムだけでなく、育成の仕組みが出来ればいいですね」

「そうですね。それにしても、会社を立ち上げるだけで精一杯意だったのに、いきなり人の採用や教育、管理をしなければならないなんて、自分に本当にこの先出来るのか不安です」
「コーチである私は、引き続き長田さんの支援をさせていただきたいと思っていますが・・」

「ええ、もちろんです。こんなにたくさんのことを、一人でやろうなんて思わないほうがいい。何でもお任せ出来ることはお任せする。お任せする順番は、コーチと一緒に決めればいい。今回の問題を未然に防ぐことが出来たのは、偶然だったと思います。しかし、これからは、偶然を当てにせず、自力で解決したいと思います」

情報の漏洩は、身近に潜む問題の一つです。もちろん、これを防ぐことが出来たことは何より嬉しいことでしたが、会社経営にコーチングの必要性をひしひしと感じました。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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青年実業家の事業拡大の悩み~企業合併の利益と弊害のバランスをはかり、戦略を立てる~

青年実業家の日比野さん。起業して早八年。会社はようやく軌道に乗り始め、経常利益も順調に増えていました。自分は「運がいい、人に恵まれている」と、年齢に似合わず常日頃から感謝の言葉を多く口にする誠実な人柄が取引先や社員から信頼され、実直な企業経営が高く評価されていました。
そんな日比野さんに大きな転機が訪れたのは、企業合併の話が持ち上がってからでした。
借入金なしの企業経営姿勢を評価されたのか? 倒産寸前のライバル会社を買収しないかと持ちかけられたのです。
日比野さんの今日のテーマは、もちろん、この買収についてでした。

「おはようございます。今朝は少し肌寒かったように思いますが、どうですか朝の散歩は、気持ちよくすごせましたか?」

「いやぁ、道を歩いていても、どうも下ばかり見ているようで、すれ違う人に挨拶されて、初めて気づく始末で・・元気がないと見られたかも知れませんねぇ」

「日比野さんの元気がないことから、皆さんにどんなことを思わせるんでしょう」

「うん、これまでは自分から挨拶しなかったことがありませんから、私が挨拶をせずに通り過ぎていくことに対して変に思ったでしょうねぇ」

「人にも分かるぐらい、日比野さんの雰囲気が変わったんですね。ところで、日比野さんが気になったことは、どんなことですか?」

「この合併の話をいただいたときから、ずっと、こんなチャンスはない、大きくなれるんだから躊躇することはないと思って、正直嬉しいんです。ただ、吸収される側の社員の統制が自分で取れるのか?と考えると、今は、まだ、自分では無理なのではないかと思うんです。企業規模は、本来、相手のほうが大きかったわけですからねぇ」

「なるほど、自分の会社より大きな資本を持っていた会社を吸収するのに、吸収したほうの社員の統制をどうするか?ということが不安なんですね」

「はい、自分はやはり、零細企業の社長の器だと思うんです。中規模の会社の社員とうちでこれまで一緒にがんばってくれた社員が馴染めなければ、私は企業を大きくする意味がないと思うのです。しかし、誰かが、この会社を吸収しなければ、その会社の社員や家族は路頭に迷うわけで・・」

「どこまでが、日比野さんの責任範囲なんでしょうねぇ」

「うん・・・そうですね。この話が持ち上がらなければ、ライバル会社の社員だったわけですからねぇ。私が面倒見なければと言うのは、おこがましい話ですかねぇ」

「いや、おこがましいとは申しませんが、ずいぶん、責任を感じておられるようですから、その必要があるのかと思っただけです」

「そうですね。たしかに、客観的に見たらおかしいでしょうね。私自身が若い頃、買収された企業の社員だった経験があってね・・無力感と言うか、モチベーションが下がってどうしようもなかったときを過ごした経験があるもんだから、なんとか、あの気持ちを味わわせないようにしたいと思ってねぇ」

「そうなんですか、買収された側の企業の社員だったんですねぇ・・辛い気持ちが分かるだけに、慎重になるわけですね」

「慎重にというか、戦略を立てておかないと、今いるうちの社員のモチベーションも一緒に下がれば、致命的に生産性が落ちるわけですから、それは回避したいということです」

「なるほど、この合併は、チャンスであるとおっしゃっただけありますね。混乱なく、事業を続けたいとお考えなんですね」

「はい、粛々と事業を続けていかないと、お客様を悲しませることになってはいけませんし。何かいい方法はないものでしょうか?」

「ご自身の社員経験を踏まえて、日比野さんが出来ることはなんですか?」

「私が出来ることは、合併後の戦略を明確にすることと、吸収した会社の社員もされた側の社員も、これからは一緒に企業のために尽くして欲しいという気持ちを分かってもらうことかな?」

「なるほど、合併は戦略の一つとして行ったと言うことを明確にすることと、社員は一つになって企業のために尽くして欲しいということを分かってもらいたいわけですね?」

「はい、そうですね。」

「そのために、日比野さんはどんな方法でみんなに語りますか?」

「そうですねぇ。社内誌よりも、ビデオかなぁ・・」

「いずれにしても、直接ではないのですか?」

「いや、だめかな?直接支店を全部回るとなると、スケジュールの調整が難しくないかな?」

「幾つの支店を回ることになるのですか?」

「新しく増えるから、全部で八支店かな?」

「1日一つでも八日間ですよね?」

「そうだねぇ・・八日間だけど、今、すでに決まっている予定を調整するのは相手に悪いからねぇ・・」

「うん・・・社員のことを考えたり、お客様のことを考えたり、大変ですね。どちらか一つと選択を迫ったら、どちらを選ばれるんでしょうか?」

「一つに絞る・・難しいなぁ・・。やはり社員のモチベーションを下げないほうが先かなぁ・・」

「何もかもお一人でしようとなさっているんですが、誰か、日比野さんの代わりになれる方はいらっしゃらないのですか?」

「お客様を任せることも出来ないし、方向を示すのは、トップの仕事だし・・うん・・困りましたねぇ」

日比野さんは、確かに誠実に物事に真正面からまじめに取り組む性格ですが、どうも優先順位がつけられないようです。
こんなふうに、目標を一つに絞りきれないときのセッションは、堂々巡りに陥りやすく、最初に戻って、シンプルに目標を明確にすると良いときがあります。
何のためにそれをするのか。大きな決断をするときは、理性を優先するのか、感情を優先するのか。
挑戦するのか、現状維持を大事にするのか。チャンクアップとチャンクダウンを使い分けしてコーチングをしていきます。
迷いや戸惑い、不安が大きいほど、コーチの役割は重要になります。イメージが描けなくなっているクライアントには、選択肢を与えるためにも、明確なイメージを描くようにしましょう。
コーチが押し付ける形の指示や命令は、絶対に避けなければなりませんが、クライアントが自分で考え答をだしていくための質問の形をとった助言・提案、例えば「コーチはこのようにしたらいいのでないかと考えますが、どうお考えになりますか」このような問いかけを必要であれば勇気をもって与えることも大切です。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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急に体調をこわしたラーメン屋さんの悩み~真剣に話を聴いてもらうことによるモチベーション向上効果~

ラーメン屋を営んで二十年。開店当初のラーメンブームに乗り、マスコミへの露出度も高く順調に十五年は「あっ!」という間に過ぎたという山形さん。忙しさにかまけて、休日もとらず、家族との時間も作れない毎日でしたが、「仕事を成功させるのが男の役目」と割り切った考え方をしていたため、夫婦の間に出来た溝が埋まらず二年前に離婚されたそうです。

今年に入って受けた健康診断により、肝臓が悪いことが判明。三ヶ月の入院が必要と宣告を受けてしまいました。店は、アルバイトがいるだけで、とても自分が入院中の仕事を任せられるような腕を持っていない為、急遽、店を長期休業とすることにし、ともかく体を治すことに専念することにしたにもかかわらず、廃業に追い込まれるのではないか、果たして復帰出来るのかと不安でならず、健康を害して悪い顔色が、なおさら、冴えない顔色となっている山形さん。
無料体験セッションをお受けにいらした最初の印象は、「この人、倒れそう・・・」というものでした。

「一生懸命、仕事に励んでいただけなのに・・。家族のためにと頑張っていたのに、気がつくと
離婚して一人ぼっち。入院同意書にサインを頼める家族がいない。手術が必要になっても、心配してくれる家族がいないんです。万一の時にも葬式を出してくれる人もいない。たしかに、特別、健康に気を配ってきたわけじゃない。でも、仕事をしても大して疲れるわけじゃなく、夜更かしをしないようにして朝だってすっきり起きていたし、体に悪いことはあまりしないようにしていたし。酒だって、お客さんに勧められたとき意外は飲まなかったし、タバコは、ラーメン屋を開業するときに1日の売り上げが三十万円になるまでは・・と願をかけて止めているうちに、自然に吸わなくなったし。何にも悪いことなんかしてこなかったのに・・・。どうして、私がこんな目にあわなければいけないんだ」

山形さんは、悔しそうに語ったままうつむき、言葉が続かなくなってしまいました。

「山形さん、お尋ねしたいことがあるんですが、よろしいですか?山形さんは今日コーチングを受けにこられているわけですが、コーチングってどんなものか、あらかじめ本を読んだり、情
報を集めたりしたことはありますか?」

「いえ、どういうものかわからなかったんですが、サラリーマンの若いお客さんが『コーチングがいいとか』、『コーチに相談するとすっきりして、ただよっていた霧がすっきりと晴れるような気がするとか』って言っていたのを思い出して・・。新聞のお知らせ欄に乗っていた案内を頼りに伺いました」

「そうですか。新聞をごらんいただいたんですね。ありがとうございます。今、お話をお聞きして、山形さんが抱えている悩みが、どれだけ深く大きなものか、私にはよく伝わってきます。しかし、山形さん。残念ですが、私はあなたの悩みを解決するのが仕事ではありません。あなたがこれからどんなふうに生きていきたいのかとか、どんな仕事をしたいのかとか、人生をどんなふうに計画して行動していきたいのかを具体的にイメージし、行動するための方法を一緒に考えるなど手助けをするのがコーチの仕事、つまり私に出来ることなんです。
現状の山形さんの苦労や不安はよく理解出来ました。残りの時間を使って、山形さんがこのセッションを通して、すこしでも前向きな気持ちを取り戻し、自分の人生は自分で決めることが出来ると感じられるようにしたいと思うのですが、いかがでしょうか?」

「そんな・・・」

「山形さん、山形さんにとって、健康を害したことは大きなショックだったのですか?
それとも、こういう生活だったら、ある程度体が壊れることも気がついていたのでしょうか?」

山形さんは、沈んだ表情のまま答えてくれました。

「実は決して健康に自信があったわけではありません。毎晩、遅くまで仕事をしていたし、新しいスープの開発のときは、何日も徹夜に近い状態になっていたこともあります。面白かったのでまったく疲れを感じませんでした。家族も気持ちは一緒に頑張ってくれていると思っていましたし・・・・。離婚してからの、ここ二年間くらいは、家族もいなくなってしまったので、家に帰る理由も目的もなくずっと店の奥の小さな部屋で寝ている始末でした。店が休みの日も研究しないと店がつぶれると思って他のお店のラーメンを食べ歩いていました」

「山形さんは、研究熱心だったんですね。私は山形さんがとてもまじめな努力家であると思います。ところで、山形さんが追求した完璧なスープの味は完成したのですか?」

「いや、完成はしていません。というか、どんな味にしたらいいか、まったくわからなくなってしまったといったほうがいいなぁ・・」

「そうですか。残念なお気持ちも、これからどうしたらいいのかという不安な気持ちでいらっしゃることもよくわかります。しかし、何にしても、まずは健康を取り戻すことが一番大切だと思うのですが、ご自身は今回の入院をどう受け止めていらっしゃるんでしょうか?」

「最初はやけっぱちでした。入院するのも止めようかと思い、せっかく先生がベッドを開けてくれた日を無視して、行かなかったんです。家族のためになるわけじゃないし。店だっていつまで持つかわからない。店をなんとかするしか私の人生はない。それなのにここで店を休むなんて、私から唯一の希望の店を取り上げるなんて・・・一体私の人生は、何のためにあったんだかと思うと、体に力が入らなくて。ただ、アルバイトしてくれていた吉山君が、『店長が帰ってくるのを楽しみに待ってますから。とりあえず働く次のバイト先は駅前のコンビニです。再開するときは、ぜったい声かけてくださいね。俺、店長のラーメンに対する頑固さが好きだったから・・』と言ってくれて。
家族は失ったけど、こんな自分のことを慕ってくれた奴がいたのかと思うと、入院して、体を治そうと思えるようになって・・」

「そうですか。今回の入院治療のきっかけは、アルバイトの吉山さんだったわけですね。
治ってお店を再開することが出来たら、彼を呼び戻してまた一緒にやりますか?」

「もちろんです。だからこそ、入院する決意をしたんだし・・」

そう言いながら、無料体験のセッションの時間が終わりました。
無料体験のセッションですから、残念ながらコーチとしてこれ以上の継続的な支援は出来ません。しかし、今、この時に感じていることを誰かに真剣に聞いてもらうだけで、人の意識はずいぶん変わっていくものです。山形さんも、最初は青白く生気のない顔をしていましたが、三十分の時間をともに過ごすうちに、顔に赤みが差し、少しだけですが、いきいきとした表情を取り戻してくれたように感じられました。

人生は、すべてをバランスよく過ごす力を備えておかなければなりません。
家庭生活、自己実現、仕事、健康、お金(経済力)など、いくつものバランスによって人生への満足感や、達成感が変わってくるものです。

私たちコーチにとって、人生のバランスがうまく図られているかどうかを客観的に冷静に、第三者の視点で見つめてあげることが使命であるのではないかを考えさせられるセッションでした。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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