「質問」の不調はなぜおこるか
コーチはクライアントが自ら考え、気付き、行動にうつることを支援するために「質問」をするのです。
コーチはクライアントのために質問をするのであって、コーチ自身の好奇心、探究心を満足させるために質問をするわけではありません。
クライアントが物事を考えるのにあたって、道筋をつけるように、クライアントの頭の中を整理してあげることが、コーチが質問することの意味なのです。
このことは、コーチングを学んだすべてのコーチが理解していることです。
しかるに「質問」のスキルを駆使しているのに、コーチングの効果が出ないと嘆く人が多いのもまた事実です。
人は「質問」をするときは、あらかじめ自分の頭のなかで自分なりの「答え」あるいは「答えのヒント」を用意して「質問」をするわけです。
この自分が用意した「答え」あるいは「答えのヒント」らしきものが、回答者から出てこないときこの「質問」は失敗したと考えがちです。
コーチングにおいても、コーチはクライアントに「質問」することによって、クライアントから何かしら「答え」あるいは「答えのヒント」らしきものが出てくることを期待しています。
このコーチの「質問」における期待とクライアントの「質問」に対する反応に齟齬が生じたとき、「質問」不調の現象がおこるのです。
コーチが自分の思考回路と同じ思考回路でクライアントが考えることを要求するから、「質問」不調がおきるのです。
自分と全く同じように考える他人などいないのです。
コーチが自分の頭で勝手に考えて、クライントは「こう考えるはずである」と思い、そしてそれなのにどうして「こう考えないのだろう」と思うから「質問」不調がおきるのです。
「質問」不調の原因
1.コーチが「質問」を行う環境になっていない。
(1)上からの指示により下が動く体制となっています。
(2)自分の意見を言わない世界となっています。
2.コーチがクライアントのために「質問」を行う考えになっていない。
(1)コーチの好奇心から「質問」をしています。
(2)コーチの考えと違うときに議論をしてしまいます。
(3)聞きたいことを聞き出そうとどんどん「質問」します。
(4)クライアントがわかっていないと思ったら「質問」を変えます。
3.クライアントが「質問」を受ける状況になっていない。
(1)「質問」されるより「指示」をしてもらいたいと思っています。
(2)コーチを信用していないので「質問」にまじめに答えないとしていません。
(3)「質問」なのに「詰問」されているように感じています。
(4)「質問」の意図がわかっていません。
「質問」不調への対応
1.コーチが「質問」を行う環境づくり。
(1)地位が下の人の答えも尊重します。
(2)奇抜な答えほど一考に価すると考えます。
2.コーチがクライアントのために「質問」を行う気持ちになります。
(1)クライアントの気付きを促す「質問」に心がけます。
(2)「質問」の意図を明確にします。
(3)前向きの未来につながる「質問」を行います。
(4)「質問」しているつもりが、詰問調になったり、説教になったりしないように注意します。
3.クライアントが「質問」を受ける状況にします。
(1)「質問」に答えていく過程で、頭の中が整理できることに気付いています。
(2)「質問」されるということは、自分の存在を認められているということを理解しています。
(3)信頼できる上司の「質問」に答えるのはうれしいと思っています。
(4)「質問」に答えることで自分が前向きになっていくことに気付いています。
「質問」効果的なものにするために
コーチングにおける「質問」はクライアントが考え、気付き、行動にうつることを支援する目的として行われるのです。
「質問」によって考えるのは、クライアントであり、気付くのも行動にうつるのもクライアントです。
クライントが考えなかったり、気づかなかったり、行動にうつらなかったとしたら、それはそのことを支援しているコーチの責任です。
コーチが、クライアントの考えるための「質問」、気付くための「質問」、行動にうつるための「質問」を、提供していないから、クラインアントが考えたり、気付いたり、行動にうつることができないのです。
クライアントが考えるための「質問」、気付くための「質問」、行動にうつるための「質問」1.オープン質問(拡大質問):
「はい」「いいえ」で答えられない「質問」であり、その答えをクライアントが考えることによって「自分のやりたいことはこれだった」とクライアント自身が気付くことができるのです。
クローズドクエスチョン(特定質問)でクライアントの思考の芽を摘まないように注意しましょう。
2.未来質問:
「何があればできるかな」と未来に向かって行動にうつることを考えさせることによって、クライアントに前向きな行動を促すことができます。
過去質問を使って「なぜできなかったんだ」と追及しないこと、追及されると言い訳を考えるものです。
3.肯定質問:
肯定的な言葉を使って「質問」することによって、クライアントに前向きな行動を促すことができます。
「いつから、やろうか」→「はい、○○からやります」否定質問を使って「どうしてやらないの」と追及しないこと、追及されると言い訳を考えるものです。