クレームは、業務改善の種。大事に育てましょう

「社長、申し訳ありません!クレームを出してしまいました」という管理職の社員に、更に追い打ちをかける社長さん。
今号は、そんなやり取りを通して、コーチングを考えてみましょう。

課長:「すいません、クレームになりました。社長があれほど力を入れられた新商品だった
のに、申し訳ないです」
社長:「なにぃ?どこが悪いってんだ?」
課長:「はい! 昨日、納品しようと思って点検していましたら、表面の磨きが足りないと
ころがあって、気になって修正させたんですが、やはりお客様から指摘されてしまっ
て・・」
社長:「あの商品は、輝きの素晴らしさが特徴の1つだと説明したはずだ!なんで、磨き残
しなんかに気づけなかったんだ?」
課長:「はぁ、あの~その前の成型のときから、すでに工程に遅れが出てまして、修正しよ
うと思ったんですが」
社長:「思うだけで仕事が進めば、俺は苦労はせん!誰のところで遅れが出たんだ?」
課長:「はい! 社長、社員には私からよく話をして、改善計画を出しますので、今はクレ
ームの処理をさせてください」
社長:「クレームの処理はもちろんだが、誰のところで止まったかわからんじゃぁ、改善の
しようがないだろうがぁ!」
課長:「はい、この件は、わたしも含めて、全員が少しずつ、改善することが望まれますの
で・・」
社長:「で、誰が怠けたんだ?」
課長:「・・・・」

どこの現場でも、聞こえてきそうな会話ですね。
この二人の思いは、おそらく一緒のはずです。
ゴールは、「良い商品を納品させたい」ということだと思います。
しかし、二人は立場が違うので、ゴールの見方と、ゴールの目指し方が違うのです。
だから、同じゴールを目指していても、会話が成立しないのです。
社長は、しくみに問題があるなら、それを最優先に解決することによって、次のロットからすぐに商品の完成度を安定させたいので、原因となった人を特定して、その仕事への適性があるかどうかを判断したいのでしょう。
そして、人を入れ替えてでも、すぐに体制を整え直した中で仕上げたものと入れ替えることで、クレームの処理だけでなく、お客様の満足を高めたいということなのでしょう。

課長は、人を特定するような犯人探しは、社員のモチベーションが下がるだけで、仕組み全体を見直すことによって、チームワークを高めて商品の完成度を上げて安定させたいと考えるのでしょう。また、このクレームの処理を優先させることが最重要事項だと考えてるのでしょう。

人は、他者の立場に身を置いて、物事を考えることが大切であることを知りながら、本当の意味で、立場を入れ替えたり、その人の思考を真似たりすることができない限り、相手の立場になって考えることはできません。
コーチは、そんな二人の思いを、それぞれ、整理して自分の思いに気づかせることができます。
お互いの会話が平行線のまま続くのであれば、ぜひ、コーチを探してみてください。
コミュニケーションの障害は、価値観の違いだけで起こるものではありません。立場の違いによる考えの差も、十分に理由になることに、コーチである皆さん、気づかせてあげてくださいね。


竹内 和美

竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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