質問のスキルアップ 1
「質問」のスキルは、相手の「気づき」を促すもっとも重要なものの1つですが、皆さん、苦手とされるようです。
なぜ、質問のスキルが高いことが望まれるのでしょうか?
人材育成や自己成長に「考えさせる」ことの重要性が高いと言われる所以はどこにあるのでしょか?
自分で考えて答えることは、自分が望んでいることが何か、自分自身の答えを探ることであるわけで、望む通りに実行させることによってモチベーションは維持できるでしょうし、自ら望んで行動したことを果たせた時の充実感や達成感は、自己信頼を高めることに大きく寄与することになり、次もまた頑張りたいというモチベーションの正の作用を生むとされるからです。
しかし、人は常に自分のしたいことを正確に理解しているわけではなりません。
潜在的な欲求として持っている自分の考えが、わからなくなってしまっている、あるいは、持っていることにさえ気づかずにいることが多いのです。
上司や先輩の言う通りに仕事ができることは、ある一定のキャリアまでは大切です。
しかし、いつまでも、新入社員ではない訳ですし、現代社会のように一人ひとりの価値観が違い、情報が氾濫し、取捨選択が困難な時代こそ、現場の一人ひとりが会社を支えることが求められる以上、自分で考え答えを出さざるをえません。しかし、いくら一人ひとりが考え、その考えから判断した結果の行動が望まれたとしても、勝手に独走して良いということではありません。
企業理念に基づいて、同じ方向を見定めて進んでいることを確認する必要があるのです。
その確認のツールとしても、また、考えを十分に引き出すためにも、この質問のスキルは、承認スキルと同じくらい大切にして、十分皆さんがトレーニングを積み、同僚や上司さえも考えさせ行動させるよう、刺激を与えられるようになりましょう。
事例)
出勤した部下の表情が、冴えない時(観察の結果から会話を組み立てます)
質問者:「君は今朝、どんな気持ちで迎えましたか?」
(選択肢のない質問)
部 下:「はぁ・・相変わらず暑いなぁ~っと思いました」
質問者:「その暑さは、あなたにどんなふうに作用しますか?」
(深く掘り下げ、本質を引き出す)
部 下:「やる気を失わせます」
質問者:「なるほど、やる気を失わせるんだね。
(評価せず、本人の答えを復唱します)
では、どうしたらその失いがちなやる気を高めることができるかな?」
(対策を自分で考えさせるきっかけを作る 意図的になりすぎないように配慮)
部 下:「暑くなければ、多少は上がると思います」
質問者:「暑いというのは、気温・室温ということですか?」
(確認のための質問はシンプルに)
部 下:「はい、部屋の温度を少し下げてはいかがでしょうか?」
質問者:「他の女の子たちへの配慮はどうしようか?」
(自分だけのことを考えさせない)
部 下:「はぁ・・・我慢してもらうかなぁ?」
質問者:「抵抗が大きい気がするな。他にどんなことができるだろう」
(答えは1つではないことに気づいてもらうために、別の選択肢を考えさせる)
部 下:「他に?ですか・・・」
質問者:「例えば、扇風機を回すとか」
(提案も、質問になる)
部 下:「そうですね。自分の傍に扇風機をおいてそれで空気を攪拌しましょう」
質問者:「そうしたら、どんな仕事が進むかな?」
(具体的な行動をイメージさせる)
部 下:「いやぁ、実は・・見積もり出さなければならないのが2社ほどたまっているので、それを今日中に仕上げます」
質問者:「わかりました。では、わたしは、扇風機を探してきましょう」
竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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