「気づき」を支援する質問
今号は、「質問」の本質の1つ、「気づき」を支援する質問を考えてみましょう。
仕事の経験が浅ければ浅いほど、人は「頑固」になって、融通が利かなくなるようです。
なぜ、人の経験と思考の固定化が関連するのでしょうか?
その関連性について、私は次のようなことから検証できるのではないかと考えました。
経験が豊富であれば、経験したことの中から得た「気づき」や「知識」を総動員させて考えることによって、答えを手にすることができる。
逆に言えば、経験が少ない=知識が少ない、経験が少ない=工夫するにもゆとりがもてない。経験が少ない=達成感や充足感がない=自己信頼が低くなるという負の心の連鎖が起こり、結果、行動しないということになってしまいます。
経験さえあれば柔軟に考えられることも、未経験なことが多い人は、どうして良いかわからない、何を考えればわからないから思考が停止してしまうか、少ない経験から無理に答えを出そうとするため、無意識のうちに防衛的になり、行動する決意ができないというパターンに陥ってしまうようです。
「気づき」とは、急激に引き起こるものです。
「あ!!そうか!」「そうそう、そういえば・・」という言葉をクライアントから聴くことができるのは、コーチ冥利に尽きますね。
クライアントが、これまで手にできなかった「気づき」を手にする様子を見る時、この仕事を選んで良かった!と思うのは、私だけでしょうか?
皆さんも、相手の気づきを支援する質問、ぜひ、たくさん作って相手に刺激を与えてくださいね。
事例)
女性社員:「係長、職場の人間関係で悩んでいるんです。相談に乗ってください」
係 長:「もちろんいいよ。何か困っているのかな?」
女性社員:「主任のA子さんなんですけど、わたしが仮受注した案件だけ、わざとゆっくりマッチングさせてるので、クライアントへの提案が遅れ、いつも受注できなくなっちゃうんですよ。ホント、意地悪な性格なんで、困ってるんです。指導してください!!」
係 長:「それホント?彼女、そんな子じゃないけどなぁ・・・」
女性社員:「じゃぁ、わたしが嘘をついてるというふうに思ってるんですか?」
係 長:「ああ、いや、違う。気を悪くしないで」
女性社員:「係長知らないからそういうこと言うんですよね?私がどれほど苦労してオーダーもらってるか、ご存じないんですか?」
係 長:「いやぁそういうつもりじゃないんだが・・・」
女性社員:「営業は、売り上げに追われると言うのに、どうして内勤の営業部員は、のんびりできるんですか?不公平です」
係 長:「まぁ、その君のまじめさ、営業部としてもたいへん貢献してもらってると思うよ。ところで、君の抱えている問題を整理したいんだがいいかな?」
女性社員:「はぃ・・・」
係 長:「君が悩んでいることは、職場の人間関係だと言うことだが、主には、営業事務の女性との関係ということかな?」
女性社員:「はい」
係 長:「それは主任一人が関わっている問題?それとも、大勢の営業部所属の女性社員との問題なのかな?」
女性社員:「うん・・・・・主任一人との問題かもしれません」
係 長:「じゃぁ、仮説を立てよう。主任一人との問題だったとしたら、何を解決したいのかな?」
女性社員:「とにかく、早くわたしの案件だけ後回しにしないで、スタッフを選んでほしいんです」
係 長:「スタッフへの声掛けが遅れることがいやなのかい?」
女性社員:「だって、売り上げにならなければ、会社は困るじゃないですか?」
係 長:「そうだね。そのほかには?」
と、そのほかには、というやり取りをずっと続けます。(中略)
係 長:「君の仕事に対する熱意、ほんとうに伝わってくるよ。それが報われていないという現状も理解できた。でも、君は、この問題を自分のこととして受け止めているのかな?」
女性社員:「え?わたしの問題だと思っていますが・・」
係 長:「それなら、なぜ、主任との改善した後のイメージがわかないのだろうか?」
女性社員:「え?だから、それは・・・」
係 長:「今、自分から主任との関係を改善する方法を考えてみないか?
それができない限り、ずっと、君は主任との問題を整理できずに、楽しい仕事ができそうにないように思うよ。むしろ、主任に対する意地を張って、君が無理をしているのは残念だと思う。わたしができることは応援する。だから、相手が悪いというだけでなく、自分が望む形はどんな形か、そのためにどうするればよいか、すこし時間をかけて考えてみたらどうかな」
女性社員:「ああ・・そういえば、この頃、主任を困らせてやろうと思って、無理に仮受注していたかもしれません」
仕事は、楽しみながら進められるに越したことはありません。
あなたなら、こういう女性社員にどんなコーチングをしますか?
じっくり考えてみてくださいね。
竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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