「承認」の中でも扱いが難しい「叱る」について考えてみましょう

秋がゆっくりやってきたと思えば、すぐに紅葉のニュースが届くようになりました。相変わらず、人も季節も、忙しく時間が過ぎているようです。さて、今号からは、「承認」に焦点を当てて、考えていきましょう。

大人になると、人から褒められるチャンスは、とても少なくなりますね。
この前、人に褒められたのはいつですか?
それはだれからでしたか?

こう質問すると、ほとんどの人が「いやぁ~、褒められた記憶なんてこの頃にはないですねぇ・・」とおっしゃいます。

では、仕事をしている時間中、叱られたのはいつですか?
そう質問すると、「今も怒られたばっかりで、うんざりしていますよ」と、即座に答えが返ってくる、若いクライアントはたくさんいます。
承認=褒められることではありません。
叱られることも、承認です。

承認とは、相手の存在自体を受け入れ、認め合うことです。
だから、相手の成長を願って叱らなければならない時、タイミングを外さず叱る承認を恐れてはなりません。

ところで、タイミングが悪い叱り方の場合、部下はどう受け止めるでしょう。
成長を願うのは、上司としての心情ですが、それは部下にはなかなか伝わりません。
まして、タイミングを逃したら、逆効果になってしまうでしょう。
今号は、承認の中でも扱いが難しい「叱る」について、考えましょう。

事例)
A君「売れました!システム受注しました」

社内に戻り、直属の上司に嬉しそうに報告するA君。同じ課の皆さんも、拍手をしてA君の報告を聴きました。
そこへ、A君の指導をしている主任のBさんが戻ってきました。

Bさん「おい、おい、冗談じゃない。A君。君の今日の営業、あれな
んだよ?ぜんぜん、準備したとおりに勧められなかったじゃ
ないか?
一体全体、何を勉強したんだよ。勘弁してほしいよ。今日は、自分が一緒にいたから良かったけど、来月から、一人で営業に出るんだぞ。もっと勉強しないと、会社の名前に信用がなくなる」

A君「はぁ・・でも、今日の説明で、お客さんは何も言わなかったじゃないですか?B主任だって、今日は自分一人でやれって言ってくれたんで、思い切ってやったから、注文いただけたんじゃないんですか?」
Bさん「確かに、一人でやれと言ったし、自分はできる限り、今日は何も言わないようにして我慢したさ。だからと言って、あんな風に、何でもできます、やりますって・・お客をだますような営業、だれがやっていいって言った?」

A君「だましてなんかいません。あらかじめ、プログラマーにも聴いていたので、やれると言ったんですよ」
Bさん「やれるのはやれるけど、費用は見てもらわないと。せっかく有償で提供できるサービスも、全部、奉仕になっちゃった。プログラマーの作業量、考えないと・・」

A君:「はぁ・・・スイマセン・・・もっと勉強します」

A君は、この後、同僚や先輩に会うたびに、「せっかく売ったのに、怒られた・・」とこぼしたそうです。

Bさんは、おそらく、A君の初受注を目の当たりにできて、嬉しかったことでしょう。指導の甲斐があったと、自分を褒めたことでしょう。
しかし、同時に、今後の営業に課題があることを、強く感じたのではないでしょうか?
その、強い思いが先に、言葉に出てしまったのではないでしょうか?

事例)
A君「売れました!システム受注しました」
Bさん「初受注、嬉しいだろ?僕も嬉しいよ」

A君「ありがとうございます」
Bさん「これで、来月から一人で回ることに少し自信が持てたかな?」

A君「いやぁ、まだまだ不安がいっぱいです」
Bさん「それじゃぁ、自信がつくようにするために、今日の営業の進め方について、一緒に考えてみよう」

こんなふうに、A君のモチベーションと、嬉しい気持ちに配慮できたらどうなるでしょう・

皆さんがBさんなら、どんなコーチングを進めますか?
考えてみてくださいね。


竹内 和美

竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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