ボタンの掛け違った親友との仲直り~仲たがいした親友とのミスコミュニケーション回復を目指す~
とても仲のよかった友達が、ある日突然、目もあわせず、口も利いてくれなくなってしまったら、あなたならどうしますか?
ちょっとしたボタンの掛け違えで起きたコミュニケーションエラーについて考えましょう。
幼馴染で、結婚したあとも、一つしか町内が離れていないというロケーションで暮らす、麻美さんと真由子さん。誰はばかることなく「親友」と言って紹介しあう仲良しでした。
ところが、ある朝、麻美さんが中学校のPTA委員会に出来かけようとして、道ですれ違った際、真由子さに知らん顔をされました。どうしたのかしらと知らん顔をされたことを気にしながらも、時間に遅れそうで学校に向かったそうです。
1週間ほどたった後、麻美さんは真由子さんをお茶に誘おうと電話をしたところ、以外にも真由子さんから「もう二度と電話をしないで。あなたを見損なったわ」と、冷たく言われてしまったそうです。
何がなにやら理解出来ない麻美さんは、真由子さんとの共通の友達に相談したところ、子供たち同士の問題が事の発端だったことを知らされました。
“そういえば、隆(長男)にそんなようなことを言った気がする・・・”という記憶を呼び覚ましながら、どうしたら誤解が解けるのかをテーマに、コーチとのセッションを希望しました。
「真由子さんとは、その後、まったく話すチャンスは見つけられないのでしょうか?」
「はい、私たちはホントにこれまで仲がよかったので、たとえば、スーパーに行く時間とか、塾の送り迎えの時間とか、お互いの行動が予測出来るんです。だから、それを外すことも簡単で、なかなか偶然を装って出会うことも出来ず・・・」
「ほんとに困っているんですネェ」
「ええ、真由子がどんな経緯で誤解したかはわかりませんが、それはホントに誤解なんです。だから、早く解いて、元のように双子姉妹といわれるような仲良しに戻りたいんです」
「戻れるといいですね。直接話すことが出来ないということですが、だれか二人の間をつないでくれるような友達はいらっしゃらないんですか?」
「共通の友達はいるんですが、直接話したほうがいい。更に誤解させるようなことになっては申し訳ないといわれて、だれも間に入ろうとしないんです」
「そういう考えもありますよね。メールは?」
「メールは、何度か送ってみましたが、返事はありません。届いているのかどうかはわかりません。まさか、受信拒否の設定にはなっていないと思いますが・・・」
「彼女と元のように仲良くなれるとすると、麻美さんは、どういった点でメリットがあるんですか?」
「メリットと言うか・・・、仲良くなれたら、いろんなことを相談出来ると思います。これまでも、お互いの愚痴を聞きあったり、子育ての相談をしたり。夫への不満を聞いてもらったり。とにかく、価値感が同じだから、話すだけで心が温かくなる存在なんです。とても大切な人なんです」
「改めて、真由子さんの存在が重要であることを感じたわけですね」
「ええ・・・」
「真由子さんはどう思っているのかしら?」
「それがわからなくて。私が隆に言った言葉を、どうしてそんなふうに取り違えて聴いたのか・・・。由樹(真由子さんの次男)君が、真由子さんに何を言ったのかもわからないし」
「お子さん同士が何を伝え合ったか、それを知りたいと思うのですか?」
「ええ、そうじゃないと、誤解は解けないから・」
「表現力のない中学生の言葉が、お互いの誤解を生んだんでしょうか?」
「え??」
「お互いに、すこしずつ、これまでの間にズレが発生していたのではないでしょうか?」
「ん・・・・・」
「何気ないたった一言で仲たがいをするようになったとは考えられない気もしますが、いかがでしょうか?」
「そうでしょうか?」
「お互いの関係を修復するという考え方もありますが、新たに真由子さんと友達になりたいと、スタートに戻るという考え方もあると思います。麻美さんが友達を作ろうとするとき、どんなことを努力しますか?」
「そうですね・・・私という人を理解してもらうために、まず、自分のことを話します」
「なるほど、自己紹介をするということでしょうか?」
「はい」
「どんな自己紹介をするの?」
「学歴とか、仕事の経験とか、子供のこととか、夫の職業とか・・」
「そういう情報を伝えたとして、相手はどんなふうに思うかしら?」
「え?より深く私を理解してくれるんじゃないでしょうか?」
「麻美さんと友達になりたくて、心の距離を近づけるのに、学歴や仕事の経験、子供のこと、夫の職業とかは重要なことかしら?」
「ん・・・」
「麻美さんがどんな趣味を持っているとか、どんな意見を持っているかとか、今どんなことに一所懸命になっているかとか、そういった情報も必要なんじゃないかしら?」
「そうですねぇ・・・」
「真由子さんに、誤解があるようなので、私の意見も聞いて欲しいけど、あなたの意見を教えて?と、ストレートに誘ってみたらいかがですか?」
「でも・・・」
「仲良く過ごしたいんでしょ?」
「それはもちろん・・・」
「もちろんなんだけど、勇気が出ない?」
「はい・・・・」
「勇気がでないのはどんなことを考えたから?」
「断られたり、嫌な顔をされたくないし・・・・」
「断られて、失うものはありますか?」
「・・・・」
「今、既に、真由子さんとは話せない状態なんでしょう?」
「はい」
「それなら、断られても、状態が変わらないだけで、希望がなくなってしまうわけじゃないでしょう?」
「それは、そうですけど・・・・」
「繰り返し、麻美さんは真由子さんと話したいと思っているということを、自分の言葉で訴えてみてはいかがですか?」
「ふう・・・・」
セッションは、このあと、麻美さんの沈黙の時間が長くなったので、中断しました。
コーチにとっては勇気の出せる問題であっても、クライアントにはそんなに簡単でないことはたくさんあります。
障害をどう乗り越えるか、コーチはその方法を考えたり、計画を立てる支援したりすることは出来ますが、一番大切な勇気を出すことを、直接支援することは難しいことです。
何がきっかけになるのかわかりませんが、こういうケースでは、辛抱強くクライアントの気づきを、寄り添いながら待つことも大切です。
竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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