創業会長の力を活かす二代目社長の配慮

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震により被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
生きるために必要なものはたくさんあると思いますが、遠く離れている私達ができる支援は、皆さんに「勇気と希望」を忘れないようにしていただくことだと思い、心をこめて今号を記します。

さて、今回は、事業承継してまもない2代目若社長とのコーチングの続きをご紹介します。

コーチ:「前回は、先代社長のお父様と意見が違うことが、大きな障害となるのか・・・と言うところで終えましたが、前回から昨日までの間に何か、お考えはまとまりましたか?」
社長:「いやぁ、まとまったようなまとまらなかったような」

コーチ:「具体的にお話しをしていただきながら、まとめましょうか?」
社長:「はい、まず、意見の違いは障害ではなくて、不快に思っているだけのような気がします」

コーチ:「具体的になっていますね。嬉しいです。不快な気持は、社長にどう影響を与えるんですか?」
社長:「やる気をそがれるんです。ああ・・またか!って」

コーチ:「天を仰ぎたいって感じ?」
社長:「まぁ、そこまではいかないですが、かなり体を重くします」

コーチ:「他には?」
社長:「ただ、一方で、あまり親父の考えを否定するのはどうか?って思っちゃいます」

コーチ:「それはなぜ?」
社長:「一生頑張ってきた人だからね。それに、自分が否定されてやる気がそがれるんだから、親父も一緒だろうって。それと・・・可哀そうだという思いもある」

コーチ:「結局、お父様思いなんですね」
社長:「うん・・・やっぱり親父ですからね・・・」

コーチ:「さて、やる気がそがれる、不快な気持ちですが、どうしましょうか?」
社長:「そうですね。どうしたらいいんでしょうか?」

コーチ:「相手を変えようと思わないこと。これは今までも散々申し上げていますよね?」
社長:「はい、今さらかわりゃしませんし」

コーチ :「では、改めて伺います。二代目社長として、いま何をしたいのでしょう?」
社長:「安定した経営をし、社員を養うこと」

コーチ :「なるほど。それを実現するためにお父様の意見が自分と違う。違うと、やる気がなくなったり、不快になる。それを乗り越えるためには?」
社長:「そういうものだと思うこと。意見がそれぞれ違うことはよくある。部長とも違うのは会議でお互い歩み寄ることにしている。
ああ、そうですね。親父にももう一度、会議に参加してもらったらどうだろう。乗っ取られるから、この頃、正式なメンバーとして会議に出席するよう要請していなかった」

コーチ :「それでは、お父上の立場はないですもんね」
社長:「そうですね。余りにマイペースなので、社員が嫌になると思っていたのですが、自分が嫌だったことを棚上げしていました」

コーチ :「それで、会議は思うように進められますか?」
社長:「いやぁ、いろいろ脱線するだろうし、人の言うことを聴くとは思えない。だから、言いたいことだけ言わせて、早めに退席していただけるよう、自由な立場で出席してもらおうと思います。そのためには、全員が入る会議のほかに、古参の幹部社員だけの会議を1つ、作るようにします。」

コーチ :「それは何か、思うことが合ってですか?」
社長:「はい、古参の幹部社員は、親父の考えの癖や表現になれているので、冷静に受け止められると思うからです。もちろん、わたしもそれは出来ますし、わたしと考えが違うところは、すぐに自分の意見を伝えることができるので、齟齬が生じても、おそらくこの間よりもごたつかないで、別の会議に進むことができると思います。」

コーチ :「なるほど、それは実行できそうなアイデアですね。ぜひ、やってみましょう。」

というところで、セッションは終了させました。

父と子。関係は単なる社員と経営者と言うよりも複雑でしょうが、実は親と子なのだから、分かりあえる要素もたくさんあることでしょう。
父から見れば、幾つになっても子供は子ども。子供からすれば、親父の背中が丸くなり、小さくなったことを受け入れて、自分がしっかりせねばと力む。そんな関係が、お互い自然体になりさえすれば上手く行く。答えを見つけられるまで、しばらく見守って参りましょう。


竹内 和美

竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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