突然の異動でやる気を失いかけてる入社3年目の女子社員~タイプの違う上司とのコミュニケーションを考える~

「おはようございます!」いつも元気なひと声とともにオフィスに飛び込んでくる中井さんは、ホテルの仕事が大好きという活発な社会人3年生、毎日を楽しんでいる女性です。
「今日も元気ですね。あなたの元気な声を聞くと私まで元気になれるわ。いつも、元気を分けてくれてありがとう」私が彼女に感謝して、いすを勧めるのもいつものことのようになりました。
ところが、今日はその元気な一言がありません。「おはようございます」の声が沈んで聞こえます。
何かあったのかなっと思いながら、いすを勧めると
「先日ね、人事異動があったんです。私、お客様に直接に接するフロント業務から外されてしまって・・裏方のオフィス業務になっちゃたんです・・」
悲しい表情を浮かべる彼女にさっそく今感じている気持ちを聞くことにしました。

「そう、オフィス業務に異動になったのね?それで今、どんな気持ち?」
「うん・・・正直、どうして?っていう気持ちを最初に感じたんです。入社当時は無我夢中でやっていたフロント業務でしたけど、三年目の今年になってお客様のお気持ちも何となく分かるようになり、上司の指示にもてきぱきと応えられるようになってきたんです。それで、さあこれから頑張るぞってとこだったんです。だから、どうして異動なの?って感じました。次に沸いてきた気持ちは『怒り』でした。なんで異動なんてさせるの?私がホテルに入ったのは、お客様と直接顔を合わせて、お客様を気持ちよくもてなしたかったからなのに。そのために、厳しい上司の言葉にも何とかついていって一生懸命やっていたのに、そんな私の気持ちが分からないホテルって、どうなのよ?って感じ」

「なるほどね。今は、怒りを感じているのね?」
「うん・・そうでもないの。今朝はね、失望かなぁ・・。内勤の仕事を1週間体験したけど、どうしてもつまらないと思えて・・・。ここにいてもいいのかなぁ?って感じ。お前はもうこのホテルにはいらない。ホテルで働きたいのなら、他のホテルに変われって、会社から言葉にならない命令っていうか、暗示をされたのかな?って思ったり、思い直してここでの仕事はきっと将来自分が前線に戻ったとき、必ず役に立つからと、自分を奮い立たせてみたり。すごく複雑な心境なんです」

「そう、気持ちが沈みかけると、自分で浮き上がらせようと別の考え方をするようにしてるのね?」
「そうですね。このまま沈んじゃったら、やる気がでないというか、たぶん、仕事に行かなくなっちゃうと思うから・・・」

中井さんは、そう言いながらも、このセッションでも、少し無理に自分の心を奮い立たせようとしているようです。

「中井さん、あなたはこの状況をどうしたいと思うの?」
「うん・・まず、何の仕事をすることが自分の役割か、それが知りたいんです。正直わかってないんです。どんな仕事を与えてもらえるかも。1週間じゃわからないし、上司からの指示もないんです」

「職場での自分の役割がわからないのね。どんな仕事を与えてもらえるか?ということだけど、こんどの上司はどんなタイプの人なの?」
「なんだかよく分からない人。何を考えているのか分からない人なんです。答えを言わないというか、具体的な指示を出してくれないんです。『これについては君はどうしたらいいと思う』って解決の方法を聞かれることはあるけど、まだ、その仕事を理解していないのに、解決の方法を考えろといわれても困るし、それよりなにより、結論を出してくれないから、どうしたらいいか、わからないんですよね」

「なるほど、上司が結論を出さない人で、中井さんと解決方法を相談する人なのね?」
「ええ、そうなんです。なんと言ったらいいのか?現場にはいなかったタイプの人ですね。現場の上司は、お客様の気持ちをいかに実現してあげるかとか、どんなふうに答えようか、瞬間、瞬間、答えを出していたわけだから・・・。今までと全く違ったタイプの上司で面食らっているんです。毎日が憂鬱なんです」

「タイプの違う上司になって、どうしていいのか面食らっているわけですね」
「あ~あ、そうか。私は、上司が今までのタイプと違うことで気持ちが沈んでいたんだ!」

「そうですね。上司にも色々なタイプの人はいますよね。新しい職場で仕事のやり方がまだ分からないのに、職場の異動と同時に上司が指示を出すタイプから、考えさせるタイプに変わったものだから混乱しているのですね。そして、それは、中井さんにとってはとても大きな問題だったんですね。それに気づいた今の気持ちはどうですか?」
「コーチにしては珍しく、せっかちな質問ですね!あはは、でも、すっごく霧が晴れてすっきり!っていう感じです。問題は、別にもあると思うけど、そのうちの一つは、解決しました。今日、ここに来るのも面倒だなって思ってたけど、来てよかった」

「今までとタイプの違う上司とどのように接しようと思いますか」
「そうですね。今度の上司は、私にじっくりと考えさせてくれるタイプ、仕事変わったばかりで右も左もよくわからないので、かえって好都合。自分のアイデアをどんどん出して、それが通用するのかどうかを検証してみることにします」

「中井さんが仕事のことを自分で考えてアイデアを出すのはとてもいいことだと思う。そのためにはどうすればいいかなあ?」
「新しい職場に早くなれないといけないと思います。そのためにも、どんどんアイデアを出して実践していこうと思います、それによって、より以上に新しいの職場での仕事にも慣れてくるはずだし・・・」

中井さんは、来たときと変わっていつもと同じくらいの明るさで、戻っていきました。
中井さんは、自分では気づいていません。彼女の心の中を占めていた問題の本質は、異動があったことではなく、仕事が嫌なことでもなかったことです。上司のタイプが変わったことにあったわけです。しかも、その問題の大きさは、自分が考えているほど、自分に大きな影響を与えてはいないのです。なぜなら、帰るときの彼女の笑顔は、いつもと同じように輝いていました。
コーチングを通して、コーチは客観的に冷静に、相手の問題解決の支援をいたします。だからこそ、いつもと何か違うことがないかと、観察眼をするどくして、クライアントと向き合います。
春は人間関係も環境も、新しくなる季節です。自分だけで解決出来ないと考えていることをコーチに話してみませんか? すっきり!春らしい心を取り戻せること、期待してください。


竹内 和美

竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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