ダイエットする気はほんとうにあるの?~目標達成の意思を確認する~
このところ仕事が忙しく、移動はすべて自家用車にし、ドアtoドアで時間短縮するほどの仕事を引き受けているIC(独立業務請負人)の清水さん。
忙しい毎日を過ごす間には、ストレスもたまることが多いらしく、間食がすすみ、その結果半年で四キロも体重が増えてしまいました。このままでは健康を害してしまうが、食べることはやめられず、どうしたものかと悩んでいました。
このままではいけないと思って運動をすることにしました。カレンダーに、運動した日は○を、出来なかった日は×を記そうと決心し、初日は勢い込んで、ウォーキングをしたものの、始めて二週間で実行出来たのはわずか二日だけという、なんとも情けない結果となったカレンダーを見て、更に落ち込んでしまいました。
コーチとは、この三ヶ月は、自己啓発のための資格取得をテーマにコーチングをしていましたが、今夜は、テーマを変更して、「健康維持を目的としてウェイトコントロールのために運動する」というテーマにして話すことにしました。
「高橋コーチ、お願いがあるんですがいいですか?」
「はい、清水さん、どんなことでしょうか?」
「ええ、今日のテーマを変更したいんですがいいですか?」
セッション開始直後、清水さんはコーチに訴えました。
「もちろん、私はかまいません。緊急に話したいことなんですね?」
毎回丁寧なセッションをしてくれる高橋コーチを、清水さんはとても信頼しています。
「はい、あの・・実は、この半年で四キロも体重が増えてしまったんですね。それで、このままではいけないと思って、運動をしようと思ったんです。でも、私はとても運動音痴で、ジムに行って、ベルトの上を歩く機械あるじゃないですか?あれで、酔っ払って気分が悪くなったり、スピードについていけなくて、落ちそうになったことがあるんです。どうにもこうにもならないんですね。水泳は、得意なんですが、ジムが開いてる時間には、仕事を終えられる日ばかりじゃないので、継続が出来そうにないし・・・。それで、ウォーキングをしようと思って、まず、ウォーキングシューズは買ったんです」
「なるほど、ジムでの運動は得意じゃないけど、水泳は得意。でも、時間が合わないので、ウォーキングをしようと思ったわけですね、すでにウォーキングシューズは買ったのね?やる気の表れですね」
「はい、それで、歩く予定も手帳の中に書き入れてはあるんですが、なかなか予定どおりにはいかないんです。例えば、書類の作成をしている途中で、お客様からの電話が入って、時間が押してくると、まぁいいか、ウォーキングは後にしようと思って、歩くという予定を後回しにしちゃうんですね。それで、結果、半月の中で歩けたのは二日間だけという悲惨な状態になってるんです」
清水さんの声がいつになく元気がなさそうだったことを受け、高橋コーチは、丁寧に質問を始めました。
「清水さん、今、とてもがっかりしているように感じるんだけど、やろうと決めたときの気持ちと出来なかったという現実の気持ちを点数でそれぞれ表してもらってもいいですか?」
「はい。やろうと決めたときはもちろん百点。今は、二十点かなぁ・・」
「なるほど、今は二十点なのね。百点になると、体重は減るの?それとも、百点になると、歩く習慣がつくの?」
「百点になったら?・・・う・・ん・・百点になったら歩く習慣がつくと思います」
「なるほどね、百点で習慣がつく。歩く目的はダイエット?それとも健康維持を目的としたウェイトコントロール?」
「健康維持を目的としたウェイトコントロールかなぁ・・」
「ダイエットじゃないのね?」
「結果としては、体重が減ると思うけど・・。目的は、健康維持を目的としたウェイトコントロールかなぁ・・どっちだろう?」
「どっちかにしなくちゃいけないんだろうか?」
「ああ、そうですね。どっちかじゃなくてもいいですね。それぞれお互いがお互いの結果であると思います」
「ダイエットと健康維持を目的としたウェイトコントロール、お互いがお互いの結果であるわけですね」
「そうです。単なるダイエットだけだったら、食べる量を少なくすればいいことです。ウォーキングしてみようと思ったのは、単なるダイエットではなくて健康維持を目的としたウェイトコントロールを意識しているからです」
「ところで、ウェイトコントロールを意識してウォーキングをそてみようと思ってシューズまで買ったのに、現状で歩く時間の障害となっているのは、仕事の量が多いことなのかしら?」
「うん、それが一番の理由だと思います。だけどそれだけではない、運動不足だから歩くのが嫌になる。だから、郵便ポストまで歩いていって郵便物を出すとか、別の用事をあわせてしようと思うんですが、買い物なんかのときは、帰りの荷物が重いとか、なんだか、自分でいつも工夫しているのは、ウォーキングをしないための理由探しみたいなんですね」
「なるほどね。しないための理由を探しては止めてるんだ・・」
「そうですね。だから、すぐに中止に出来るんです」
「どうして中止してしまうんだろう?」
「結局は面倒くさがりなのかもしれません。それと心のどこかにウォーキングをしても、体重が落ちないとき、もっと過酷なことをしなければいけないので、ウォーキングを中止にすることで、体重が落ちない理由作りにしているのかもしれません」
「そうかぁ、じゃあね聴いてもいいかな? ウェイトコントロールのためのウォーキング、清水さんは、本当にしたいと思っているの?」
「・・・・」
高橋コーチが最後にした質問は、意志の確認です。
清水さんは、この質問にじっくり考えた後、高橋コーチと歩いた日は、写メールを送るという約束をし、現在、ほぼ毎日歩けるようになったとのことです。
仕事の合間や、移動のとき、ドアのまん前までは車で乗りつけず、公共の駐車場などを利用し、二十分は歩くという目標達成を目指し、カレンダーの丸印を増やしているそうです。
竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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