お父さんの家庭での立場~家族とお父さんのコミュニケーションを考える~
「こんにちは。どうしたの?珍しく暗い表情ですねぇ・・」
「うん・・どうもこのごろ子どもの気持ちが理解出来なくて」
「お子さんの気持ちが理解出来ないの?それはどんなことで感じたの?」
「急に優しくなったり、急に感情的になっていたり」
「そう、情緒が安定してないってこと?」
「情緒不安定。そうそう、まさしくそんな感じだね。女の子っていうのは、どうしてああ、感情で物事を捉えるのか僕には理解出来ない」
「男性と女性では、物事の考え方や感じ方が違いますからネェ。中学生でしたっけ?お子さん」
「ええ、そうです。二年生になって、ますます理解出来ないですよ。黙って帰ってきて、邪魔!とかって言われるし。ここは僕が立てた家で、休日に横になっていて何が悪い?って言うと、『何向きになるの?ばっかじゃない?』って言うから、「親に向かって馬鹿とは何事だ!」っと怒鳴ろうもんなら、食事もせずに部屋に上がってしまう。女房からは、『食事前くらいそっとしておいたら?』と言われる始末で・・」
「お子さんの心の中を色に例えると、そういう怒っているというか、感情的になっているときは何色だと思う?」
「難しいなぁ・・色ですねぇ?」
「そう、色」
「うん・・・黒かなぁ・・グレーかなぁ・・・」
「黒かグレー。色味が感じられないということですか?」
「そうですね。赤じゃなくてもいいけど、青とか、緑とか、はっきり目で見てわかる色ならありがたい」
「扱いやすいってことですか?」
「ええ、殺気立っていることはわかるが、原因がわからないのは困る」
「ところで、年頃の娘の感情とか心がわかると、父親と娘はどんな関係になれるのかしら?」
「?・・・・」
しばらく考えていますが、なかなか答えが出ません。
「理想的な娘との関係なんて聞いたこともないなぁ。第一、そんなこと聞いたら、自分の気持ち、悟られちゃうでしょ?」
「格好が悪いの?」
「娘の扱いがわからないと戸惑っていることを悟られるのはいやだな」
「うん・・・複雑そうですね。心の中」
「そうですね。自分の心が複雑なのは気づかなかったなぁ・・。複雑なのは、娘のほうだとばっかり思っていた」
「最初にね、機嫌のいい日もあるとのことでしたが、機嫌がいい日は、普通に会話出来るんですか?」
「ああ、そうですね。機嫌がいい日は、ちゃんと挨拶もするし、乱暴な言葉も使わない。でも、そういえば、会話じゃないですね。『ただいま、おかえり』『お風呂先に入るね、どうぞ』って具合かな?」
「会話じゃないですね。会話と言うのは、一つの言葉から、お互いの意思や感情を共有するために、膨らみますからね」
「そうなんだよねぇ、許可をとるとか、挨拶とか。そういえば、そんなことくらいしか言葉を交わさないなぁ」
「お嬢さんと、どんなことを話してみたいのかしら?」
「このごろ、どうだ?って」
「何をお尋ねになりたいの?」
「学校のこととか、部活のこととか・・・」
「学校のことや部活のこと以外には?」
「・・・」
「思いつきませんか?」
「思いつかないことに気づきました・・・」
「そうですね。何かを話したいというよりは、聞き出したいだけなんじゃないかなと感じました。でも、それで娘さんは話したいと思うでしょうか?たとえば、『お父さん、このごろ会社どう?』って聞かれて、お家で家族に話したいことってありますか?」
「そうだよなぁ・・言ったってしょうがないと思うし。愚痴になってもいけないと思うし」
「お嬢さんの情緒が不安定なことについて、奥様は心配されてるんですか?」
「いや、女房と娘はいろんな話をしてる。機嫌のいいときは」
「機嫌がいいときだけの会話かもしれませんが、それで奥様は何を感じていると思われます?」
「女房に聞いたことはないなぁ・・・」
「大谷さん、娘さんとの関係だけじゃなく、奥様とももう少し情報交換したほうがいいんじゃないかしら?」
「そうだなぁ・・。何か、わかったような気がする。僕は、自分の家に自分の心の居場所がないんだ。でもそれは、自分が家族とコミュニケーションをとらないからだ。でも、どうしらいいだろう」
「そうですね。今のお気持ちを、率直に家族に話されたらいかがでしょうか?」
「抵抗あるなぁ・・」
「勇気を出すためには、何が必要ですか?」
「うん・・・でも、せっかく家にいる時間が持てるようになったわけだしなぁ」
「私にお手伝い出来ることがあれば、させていただきますが・・」
「そうだ!お茶、飲みに来ませんか?」
「お茶をご馳走になれるのですね?」
「ええ、そうすれば、コーチを交えて会話が出来る」
「きっかけを作るということであれば、いい方法ですね」
「じゃ、早速家にいらっしゃいませんか?」
「ちょっと待ってくださいね。私は同じ主婦として意見があります。聞いていただけますか?」
「はい」
「主婦としては、急なお客様ほど対応に困ることがありません。たとえば、整理整頓が出来てないとか、お茶菓子がないとか」
「そういうもんですかねぇ・・我が家はいつも女房がきれいにしてますけど」
「でも、お客様を迎えるのは別ですよ。提案があるんですが・・・」
「どうぞ」
「カフェスタイルの喫茶店に奥様をお連れになったらいかがでしょうか?」
人にはいろいろな役割があります。
お父さんとして、夫として、息子として。
家族の中でも、二つも三つも役割をこなします。
それぞれにふさわしい役割の果たし方を考えてみてはいかがでしょうか?
竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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