適応性の高く職務経験の少ない人材の活かし方編

才能(資質)や性格を活かしたコーチングの事例。
今回は、職務経歴の少ない30代の女性のコーチングです。
本人は、一貫した対人業務に自信があるようですが、指示を受けて仕事をしてきたその経験をどう活かすことができるか、どんなことをすればよいのかに気づけるでしょうか。

「適応性の高く職務経験の少ない人材の活かし方編」

係長:「どうですか?職場の雰囲気には慣れましたか?」
新人:「はい。おかげさまで。皆さん言い方ばかりなので、とても居心地がよいです」

係長:「そうですか。それは良かった。これまでも対人業務だったので、コールセンターの仕事にも早く馴染めるのではないかと思って安心はしていました。しかし、転職は初めてで、これまでに仕事は2つしか経験がありませんから、応用できるものが少ないですからね」
新人:「ありがとうございます。皆さんの応対を参考に、お客様とのやり取りの瞬間を楽しんでいます」

係長:「それは心強い。しかし、やり取りの中には、気が滅入るようなものもあるだろうから、主任に相談して進めてくださいね。」
新人:「ありがとうございます。でも、わたしは早急の対応など、プレッシャーがエネルギーになるタイプですから、安心してください」

係長:「あなたは、自己分析もしっかりできているし、自分の才能をよく心得て上手く使える人なので、安心です。しかし、これまでのように顔が見える関係ではないので、そこは注意してほしい」
新人:「あるがままに、お客様の声に耳を傾けたいと思います」

係長:「そうですね。まずは、お客様の声をしっかり聴いてください。慣れてきたら、あなたにはそれ以上の成果を期待していますが、何か勉強したいことはありますか?」
新人:「お客様は、心理的に満足を求めていらっしゃるだけですよね?」

係長:「もちろん。満足を求めていらっしゃる。では、その満足は何で高まると思いますか?」
新人:「コールセンターは、お客様の質問に答え、お客様の不満や疑問を解決するのが仕事。だから、しっかり応対ができれば良いのではないでしょうか?」

係長:「そうですね。それも大切ですが、それ以上に何が必要だと思いますか?」
新人:「そのほかに・・・ですか?」

係長:「そうです。そのほかにです」
新人:「そうですね・・・」

係長:「商品知識はもちろんです」
新人:「はぁ・・」

係長:「例えば、交渉力。お客様の満足を高めるということは、お客様の意見を全部受け入れる。聞き入れるということではありません。お客様の意見と私ども会社の意見を合わせて、どちらも満足できるような新しいアイデアの提案をしながら、話を進めなければなりません」
新人:「交渉ですか・・・苦手かもしれません」

係長:「お客様は、自分の言い分を通すことで満足を得ると思いこんでいらっしゃいます。でも、新しい意見や、他の考えに触れることで、気持ちが変わることだってあるんです。あなたが勉強することはたくさんあるように思いますが、どうですか?」
新人:「そうですね。わたしが今、何を一番学べばよいか、教えていただけますか?」

係長:「そうですね。では、まず、電話口の人の表情を想像しやすくなるように、相手を理解するために聴くという傾聴を学びましょうか?その人の表情が想像できれば、その人の人格に触れることができれば、お客様に理解
を得られやすくなるでしょうし、あなたも1本1本の電話の後で、達成感が大きくなることでしょう。そのために、何を準備したらよいか一緒に考えましょう」

この新人のように、職務経歴が少ない場合、応用できる知識や経験が少ないので、不安に陥りがちです。
しかし、適応性という才能に恵まれた人は、ともすると、突然の要請や、予期せぬ変更を待ち望む柔軟性があるので、仕事の成果があげられていると錯覚を起こすことがあります。また、急な修正や対応など、プレッシャーがエネルギーとなってやる気が高まるという行動特性があるため、日々の勉強を怠る傾向がみられるのです。

今、この瞬間を生きることがモットーなこのタイプには、「未来」があることや、その未来は自分次第でいかようにも変化させることができるということを予感させ、今の積み重ねがその未来につながることを前提に、継続的に学習し、教養を高めるように指導してから、準備計画などについて、コーチングを行うようにしましょう。


竹内 和美

竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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