会話の行く先を常に意識することを忘れないようにしましょうね。
コーチングは、問題や課題を解決するために行うものではありません。
問題や課題を抱えている当人が、解決しようと決意し、どう行動するかを決めていく過程をサポートするために行うものです。
問題解決のために、上司と会話する場面が多いので、どうしても、上司が助言や指示を与えてしまいがちですが、部下の心の声は、果たしてそれを望んでいるのでしょうか?
( )の中は、それぞれの心情です。
今回は、そんなことを考えながら、お読みください。
係長:「今年はどんな目標を立てたのかな?」
(今年も頑張ってほしいという期待を込めた質問)
部下:「はい、わたしも今年で35歳。崖っぷち状態から脱出しようと思います」
(新年早々、何を聴かれるかと思えば、目標設定かぁ・・・重いな・・・)
係長:「崖っぷちにずっと立っているのかい?」
(そんなこと思っているのか?ちょっと驚いたな)
部下:「はい、ここ数年、思うように成果が上がっていません」
(ちょっと謙遜しておいたほうがよさそうだな)
係長:「成果が上がっていないと感じているのなら、改善策を考えたらいいのじゃないのかね?」
(おいおい、伸び盛りの君がそんなに気弱なことでどうする? ここはハッパをかけたほうがいいな)
部下:「いえ、改善策は考えているんですが、毎年、結果に結びつかないので」
(そんなことはとっくに考えてます!)
係長:「それは、改善策とは言えないんじゃないのか?」
(結果が伴わないなら、それは改善策ではないことくらい、彼なら理解していそうなのになぁ)
部下:「はぁ、そうかもしれませんが、アイデアはいいと思うんです」
(面倒なことになったな・・・しまったなぁ)
係長:「アイデアはいい?じゃ、何が悪いんだ?」
(本気でこの子は考えているんだろうか?)
部下:「はぁ、続かないんです」
(ヤバイから、本音を言って、話しを終えたいな)
係長:「続かないんじゃなくて、続けないんじゃないのかね?」
(おいおい、冗談じゃないよ。助言したほうがいいみたいだな)
部下:「・・・・」
(おお・・やっちまった!面倒なことになった 説教だなこのパターン)
係長:「主体的に考える癖がないように思うんだが・・・」
(自分の自己成長は自己責任で計画しなきゃダメじゃないか。自分は常にそうしてきたから、今があるのだ。わからせてやろう)
部下:「はぁ・・・・」
(だから何だって言うんだ。ちゃんと考えているけど、今は何を言ってもダメだな)
係長:「君に一番足らないことは、自分を信じるということじゃないのかね?
決めたことを決めたとおりに実行する。そこには、イレギュラーはない。
自分を大事にすることだな。今年は、君の自信を高めることが優先されるなぁ」
(自分で考えられないなら、指示を出そう。きっと自分を見失っているだけだ。落ち着けば、自分を取り戻すだろう)
部下:「ありがとうございます。自分を裏切ることに慣れているせいか、係長の言葉 はイマいちピンときませんが、自信が大事だという気持ちは湧いてきました」
(せめて、ちょっとは言い返しておこう。なんで新年早々説教なんだろう。なんで目標を指示されなきゃならないんだ?)
コーチングの難しさは、部下の話すことを、自叙伝的に聴いてしまうか、あるいは、自分の経験的知見で解決してあげようというおせっかいな気持ちが手放せないからでしょう。
また、会話の目的を見失わないよう、会話の行く先を常に意識することを忘れないようにしましょうね。
竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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