ボランティア団体の一人の理事の悩み~コミュニケーションを拡大する~
日本にもたくさんのボランティア団体が存在し、それぞれの活動趣旨に賛同した人は、会員として活動しています。
鳴海さんもそんな一人で、今年度、初めて理事になりました。理事の一人として理事会に顔を出し、活動の方向や戦略を立案する側に立てると思い、ワクワクしながら1回目の会議に参加しました。
初めての会議ということあり、緊張して皆さんの話を聞いている間に会議は終了したが、何かしっくりしない気がして、なんとなく心が重い感じでした。最初ということもあり、まぁ、次はちゃんと発言出来るでしょうと、自分を納得させるようにして帰宅しました。
二回、三回と、会議は月に1度行われましたが、終わったあと、毎回何か心に重いものを感じて家に戻っていました。
任期は1年で、再任は妨げられないそうであっても、通常は十二回の会議に出席すると任期満了となるそうです。
今日こそは、すっきり「やった!」と満足する会議に参加にしたいと願い、はりきって時間前に会議場へ到着しました。
ところが、10名の理事会メンバーのうちお一人しか会場に入っていません。「皆さん遅いですね?」と挨拶代わりに声を掛け合うも、開始七分前になっても会長すら会場入りしてきません。
何かが違うと思いながら、その日の会議に出席した後、コーチングの無料体験コースに参加されました。
「はじめまして。コーチの藤原です」
「今、どんな感じですか?」
「今日あったことで、何か気持ちがスッキリしないというか、満足していないんです」
「どんなことでも、スッキリしない、満足しないという重荷を下ろすためにも、コーチングの無料体験を楽しみましょう」
「はい、よろしくお願いします。」
鳴海さんは、硬い表情を浮かべて、藤原コーチとあいさつを交わしました。
「鳴海さん、今日、あなたが満足出来なかったことは何ですか?」
いきなりの質問でしたので、鳴海さんは少し戸惑った表情を浮かべながらも、「実は、今日、ある奉仕活動をしている団体の会議があったんですが、なんかスッキリしていないんですよね。
もうほぼ1年の任期を終えようとしているのに、毎回、何か遣り残しているような気がして、気持ち悪くて・・・」
「なるほど、スッキリしないというか、気持ち悪い感じが残っているんですね」
「ええ、そうなんです。気持ち悪いっていう感じのほうが強いかな?」
「なるほど。どんな点が気持ち悪いんでしょうか?ちょっと漠然とした質問ですか?」
「いえ・・・なんていうのかなぁ? 言いたいことが言えてないって感じですかねぇ・・・。いや違うかな?言いたいことは言ってるんだけど、すんなり言えてないっていうか・・・」
「うん、ちょっとあいまいな感じなんだけれども、言いたいことがすんなり言えないっていうことが、気持ち悪い原因なんでしょうか?」
「ん、まぁ、そんな感じかな?」
「言ってるのに言えないってどんなことなんでしょうか?お差し支えなければ具体的に伺っても良いですか?」
「はい。あの、私が所属しているボランティア団体は女性が多い団体です。役員のほとんどが女性なので、会議と言っても雑談会みたいなものなんです。どこからが議案の審議で、どこからが雑談か分からないんです。今日なんかは、会長ですら、会議室にあわてて入ってきたのが五分前だし・・・」
「なるほど、開始時間ぎりぎりに入った会長に対してどんな感じを抱いたのでしょうか?」
「そうですね、時間は守るべきだし、あんなにぎりぎりで会議を始めても上手くいくはずがない。信頼出来ないっていう気持ちですね。あと、会議中の発言が、会議ルールを無視していて、発言している人の発言が終わりきってないのに、会長は言い訳みたいな、自分の解釈だけを押し付けようとするし。発言していると、こそこそ、隣の席の会員と耳打ちしながら発言するし。こんな会長でも1年の活動はそれなりに出来たんですが、どうにもこうにも、我慢が出来なくて」
「そうですね。会議ルールを無視する。時間には遅れそうになるし。リーダーとして信頼出来ないことが気持ちをふさいでいる大きな要因になっているんですか?」
「ええ、そうですね。リーダーって、文字通り、リードする人だと思うんです。リードする人と信頼関係が結べないのはいやですね」
「そうですね。信頼関係が結べないのはいやですね。ところで鳴海さん、鳴海さんが、残り1回の会議の参加を満足のいくものにするために、あなた自身が努力出来ることはなんですか?」
「私が努力出来ることですか?私が努力しなければいけないんですか?私には原因がないと思うんですが・・何か、私に原因があるんですか?私が間違っているんですか?」
「いえ、そうではありません。鳴海さんは会議ルールを守っているし、当事者意識も高く、積極的に参加している姿勢はとても素敵に思います。しかし、同時に、会長への信頼感が持てないからといって、相手を変えることは出来ませんね。それに、急に会議ルールを学ばせようとしても時間が足らないことでしょう。それでも、あなたに満足していただきたいと、私は心から願います。だからこそ、あなたがあなた自身のために出来る努力を考えていただきたいと思うのです。いかがでしょうか?」
「うん・・・そうですね。何か自分のために出来ることはないかなぁ? 発言をさえぎられそうになっても『ちょっと待ってください。最後まで聞いてもらってもいいですか?あとで、会長のご意見は伺います』とはっきり言ってみようかな?」
「うん、それいいですね。会長のためにもなりますよね。会議の発言ルールを勉強するきっかけになるかもね。もちろん、そういう発言を勇気をもってすることによって、自分のためにもなりますよね」
「私の考え方が間違っているわけじゃないんですよね?」
「ご自分の考えに自信が持てないんですか?」
「ええ、だって、みんな発言ルールも守らずに平気でいるように思えて、それでいいんでしょうか。勉強してないんですかねぇ・・」
「憶測やイメージで私は意見を申し上げることは出来ませんが、鳴海さんがそう感じていることは支持したいと思いますよ」
「何か、結局問題は解決していないけれど、心はスッキリしました。これからもコーチングを受けたいのですが、コーチングを継続して受けるためにはどうしたらいいんですか?私はこれまで、自分の意見は大きな声で言うなと、職場の上司からも、夫からも言われ続けてきました。なぜなら、私の意見は正論過ぎて、相手を追い詰めるだけで、問題をややこしくするだけだって言われてきてたんです。だから、どんなことも飲み込んでいました」
「辛かったですね。でも、誰も皆、自分の意見を言うことを妨げられることはないと思います。コミュニケーション能力の向上のためにも、コーチングを身近に感じる生活をしてみましょう」と鳴海さんを励まし、セッションを終了しました。
竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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