姉妹で始めたカフェ お姉さんの悩み~共同経営者とのコミュニケーションを回復させるためのセッション~

美人姉妹と評判のカフェが出来て半年。
都会ではすっかり定着しているカフェですが、地方都市ではまだ馴染まれず、経営に対する理想と現実のギャップに疲れてきたようです。
今日は、妹の雅恵さんが僻みっぽく、お客さまについて何かと不平や不満をこぼすし、このごろでは、お客様がお帰りになるとすぐ後にでさえ、お客様の悪口を言うようになり、忘れ物でもして引き換えされたらどうしようか?と、はらはらしているお姉さんの悠美さんとのセッションです。
「ちょっと緊張してますか?」
「はい、妹と違って、私はあまり話すのが得意ではないので、上手く話せるかどうか・・・」

「大丈夫ですよ。上手く話す必要はありません・・といいたいところですが、上手いか下手かを決めるのは、自分自身であって私ではありません。つまり、悠美さんが話したいことが話せて上手く出来たと思えば、それで満点。でも、たとえ上手く自分の気持ちが話せないなと感じても、私がお伺いしたいことや、悠美さんとおなじ気持ちになりたいことがあれば、何度も繰り返してお尋ねしますから大丈夫です。落ち着いていただきたいと思います」
「はい、わかりました。今日のテーマは、妹と今後どうやって接していいかということにしたいんですが、よろしいでしょうか?」

「はい、もちろんです。妹さんと今後どう接したらいいかということですね?一緒にお店をなさっているのですから、一日中顔を合わせているんですものね。お話が出来ないと困ることはたくさんありますね?」
「はい、たくさんあります。特に、厨房は私が取り仕切りますが、お客様のことやメニューを決めるのは彼女ですから、何かと話をしなければいけないことが多いんです。でも、今のように、お客様の悪口に同調したり、近所の方とのお付き合いの愚痴を聞かされるばかりでは・・・」

「そうですね。それは辛いですね。お客様の悪口というのは、どんな感じなんでしょうか?」
「そうですねぇ・・たとえば、ランチの時間は、少しでも早くお客様を入れ替えたいのが、経営者としての気持ちですが、女性のお客様はそういうわけにはいきません。『もう、長話して・・・次のお客断らなきゃいかんぶん、請求したろかなぁ』とかっていう感じなんです。心苦しいというか、ハラハラしますね」

「なるほどね。経営者としては大切な要素ではありますけれどもね。回転率が下がるということはね」
「言い方もあるのかな?って思うんです。それに、親しいお客様にそれを口にして言ってしまうので、お客様からお客様に漏れやしないかと・・」

「お気詰まりですね」
「ご近所の人のことに関しては、皆がどんなにいい人だねって言ってても、欠点というか、悪口を言うんです。だんだん、妹の顔を見るのも嫌になってきてしまって・・」

「妹さんには、どうなってもらいたいんですか」
「店を開いたときに、二人で話したお店にするために、ちゃんとやってもらいたいんです」

「悠美さんは、どんなお店にしたいんですか?」
「そうですね、来店者数を増やすことも重要ですが、根強いファンが出来る店にしたいんです」

「そのためには?」
「そのためには、入りやすさや、居心地の良さをアピールしたいんです」

「そのためには?」
「うん・・・・駐車場の問題は重要な要素の一つでしょうし」

「そのほかに大切なことを三つ考えてみましょうか?」
「三つもですか?・・・あるかなぁ・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ひとつ、私の考えを聞いていただけますか?」

「はい・・はい、お願いします」
「お二人のわだかまりを取ることによって、店内の雰囲気を明るくすることです」

「え?」
「おそらく、客足が落ちていると思うんです。これには根拠はありません。ですが、人間、自分のお金を払って食事やお茶をするのに、居心地の悪いところは足を向けません。このごろ、お二人がそれぞれお互いに言いたいことがあるのに、言わずにおなかの中に溜め込んでいるぎすぎすした関係の店が、居心地がいいと思いません。ということは、客足も鈍っているはずです」

「たしかに、このところ、売り上げは確実に落ちていますが・・・」
「売り上げが落ちているのは、誰の責任でしょうか」

「よく分かりません。妹の態度が影響しているのかもしれないし・・・私には和からないんです。どうして妹があんな態度をとるようになったのか・・・」
「お二人のおなかの底に溜まっているものを出し合うだけでも、ずいぶん、ちがうんじゃないでしょうか?」

「でも・・・」
「ひとつ、提案をしてもいいですか?」

「だれか、お二人が信頼している人はいませんか?その人に間に入っていただいたらどうですか?」
「・・・うん・・・・あ、そうだ。雅恵の同級生のお姉さんで、雅恵の気性を良く知っている先輩がいます。この間、東京の勤め先を辞めて戻ってきたって、お茶を飲みに来てくれた人がいますね」

「なるほど、その人は、悠美さんも良くご存知ですか?」
「はい、私の先輩でもありますので、大丈夫です。彼女なら、上手に話しに入ってくれると思います」

「直接解決するのは、お二人ですが、解決したい問題があることを伝えるために、先輩のご協力をいただいたらどうでしょうか?」
「はい、そうします。このままじゃ、お店も立ち行かなくなってしまうし。ご近所とも上手く付き合っていけそうにないので・・・」

「不安なことがたくさんあって、大変だと思いますが、ぜひ、先輩の方のご協力をいただきましょう。ところで、その先輩を交えた雅恵さんとの話し合いをいつ、行いますか?」
「先輩の予定があるので・・・」

「悠美さん、すべての問題を解決するためには、悠美さん自身が行動を起こさなければならないのですよ? いつにしますか?」
「はい、明日、先輩の都合を聞くために、メールを打ちます。その返事次第では、すぐに逢う事が出来ると思います」

「そうですね。では、明日、メールを打ってみましょう」
「はい、ありがとうございました」

「こちらこそ、厳しいことを申し上げましたが、お許しくださいね」
「いえ、厳しいとは思えませんでした。コーチのお人柄でしょうか?私もそんなふうになりたいですね・・・」

メタコミュニケーションを図って、このセッションを締めくくった例です。
誰にも目標があり、誰にもそれを解決する能力もある。そう信じることが大切ですが、クライアントを信じることと、黙っていつも見守ることが必ずしも機能するばかりではありません。最後の壁を乗り越えさせれば、行動を起こせるというときは、背中を押すのもコーチの役割ではないでしょうか?


竹内 和美

竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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